短編
□涙の理由
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私には好きなヒトがいます。
そのヒトは背が高くてカッコよくて青い髪を持っています。
私が泣いている時は優しく頭を撫でてくれます。
私が困っている時は助けてくれます。
でも同じなのです。
誰に対してでも同じようにするのです。
それだけなら、まだ耐えれました。
でも、ある日知らない女の人と一緒に歩いていたのです。
手を繋ぎながら、ニコニコと。
私にすら見せてくれない、見たことのない笑顔をしていたのです。
神様は残酷ですね。
どうして私たちを兄妹にしてしまったのでしょうか。
私たちが兄妹ではなければきっと結ばれていたはずなのに。
でも、あのヒトは…
兄さんはもっと残酷でした。
私がいつものようにリビングでテレビを見てると兄さんが嬉しそうな顔をして私に近づいてきました。
なぜかはわかりません。
でもとても嫌な予感がしました。
『ミク、大事な話があるんだよ』
『何?兄さん』
『俺、結婚するんだ』
ガラガラと私の中で“何か”が崩れるような音がしました。
そして、今まで優しかった兄さんが悪魔のように見えてきました。
そんな私にお構いなしに話はどんどん進んでいきます。
『お相手は…見たことあるよね?茶色の髪の綺麗な女の人だよ。それで、式は3ヶ月後に挙げようと思っていてね、父さんと母さんにはもう伝えてあるんだ。…ミクにもなるべく早く伝えようと思っていたんだけど、ごめんね』
あまりにも急すぎます。
あまりにも酷すぎます。
あまりにも悲しすぎます。
それでも私は“妹”なのです。
だから言わなければならないのです。
『おめでとう、兄さん』
その日、私は自分の部屋で泣きました。
兄さんに聞こえないように、声を押し殺して静かに。
それから、3ヶ月後。
兄さんは結婚しました。
あれから2年。
私は一人で耐えています。
この2年はとても長くてつらいものでした。
“彼”に会うまでは。