短編

□素直になれなくて
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鏡音レンなんて大嫌い。

髪の毛引っ張ってくるし、私が言うことに反抗してくるし、お兄ちゃんからもらったアイスだって食べちゃうし、お姉ちゃんと晩ごはん一緒に作ってたら邪魔してくるし、クオくんに借りた本取られるし、リンちゃんと遊んでたら叩かれるし…。



いつからこんな風になっちゃったんだろ。
前はもっと仲良かったのに…。





好き、だったのに…。





私、レンくんに嫌われることしちゃったのかな…?



















「うわっ、ブサイクな顔!!」

「ウザイよ、鏡音レンくん」


今日もまた始まった。
冷たいモノを飲もうと思ってリビングに行ってみたら、ヤな奴がいた。

ゲームをしながらソファに座ってる。






やっぱ部屋に戻ろっかな。






回れ右をして階段の方に行こうとすると


「飲みモノ、取りに来たんじゃないの?」


なんて声をかけられた。

珍しい。


「君には関係ないよ」


あーぁ、可愛くない返事しちゃった。

仕方ないよね、嫌われてるんだし…。
するしかないよね。


「あっそ」


そう言ってまたゲームに集中する。

なんか、子供みたい。
いや、子供なんだけど…。



まるで相手にしてもらえなくて、すねちゃったみたいな感じ。


「部屋に戻るんじゃなかったの」

「あー、ハイハイ。戻ればいいんでしょ、戻れば。お邪魔虫は消えますよ」


本当は仲良くしたいのに。
バカだな、私。
素直になれればいいのに。
嫌いなんて、嘘なのに。


「……好きなのに」


ダメだ、泣きそう。
部屋に戻ったら、泣いちゃう。
レンくんに見られるよりマシか。


「今、なんて言った!?」


肩にグイって力がきて、無理やり振り向かされた。
もちろん、レンくんに。


「…なんて言ったの?」

「“お邪魔虫は消えますよ”だと思うけど?」

「違う!!その次に言ったやつ!」


なんか言ったけ?
他にレンくんが怒るようなこと。


「…………………す、好きなのにって言わなかった!?」

「………………………え?」


私…そんなこと口にした!?
無意識に言っちゃった!?


「そ、そんなこと言っ「絶対、言った!!」


否定しようとしたらレンくんに遮られた。
逃げ道、ない。
どうしよ!?


「俺が、なんで、ミク姉の邪魔するのか、わかる!?」


突然の質問にびっくり。
なんで邪魔してくるのかって、そりゃ…


「キライだからでしょ」



「違う!全然、違う!!」


じゃあ、なんで?

わからずに首を傾げて必死に考える。

だって、キライだから邪魔するんじゃないの?
キライだからイジワル言うんじゃないの?


「〜〜〜っもう、鈍い!!」

「な、誰がにぶっ」


…あれ?苦しい?
レンくん、どこ行った?
ていうか、何?




なんで、私、抱き締められてるの?


「……好き」


耳元で小さくレンくんの声がした。

あぁ、今、レンくんに抱き締められてるのか。

なんて場違いなこと考えてる。


「ミク姉は、俺のこと、どう思ってんの」


レンくんのこと…。
きっと、同じなんだろうな…。
でも、すぐに認めちゃうのは悔しいからね、最後にワガママ言っちゃお。


「そうだな…。もう一回、言ってくれたら教えてあげる」


するとレンくん、真っ赤な顔になりながらさっきより腕に力をこめた。


「好き」


素直に聞けたレンくんの言葉が嬉しかった。


「私も好き、大好き」


レンくんに頭をグリグリとするとギュって抱き締め返してくれた。










「もっと素直になればよかったね」

「そだね」


今日も君がとなりにいる幸せ。

世界で一番、幸せな時間。

素直になれる特別な場所。


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