短編

□君とボク
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朝、目を覚ますといつもの光景。

私はベッドに寝てて、白い天井があって…

あれ?おかしい。

隣には何もないはずなのに温もりがある。

ゆっくりと温もりを感じる方を見ると金髪が見えた。

いつの間にベッドに潜り込んだのか、穏やかな寝息をたてている。

よく見れば、しっかりと私にくっついてるし。

起こさなきゃ。


「レンくん、起きて。ここは君のベッドじゃないよ?」


肩を揺さぶって無理やり起こす。


「ん…?ぁ、おはよ」


「“おはよ”じゃないよ。なんで私の部屋に、ん…?!」


いきなり、キスをされ思考が止まった。

その隙に君の舌が私の唇を割って口内に入ってくる。

そして、私の舌を絡め長いキスをする。

急に吸い付かれたのに、思わず大きく肩が跳ねてしまった。

まずいな、コレ。



やっと、解放されたと思ったら天井をバックに君が覆い被さってきた。

あぁ、いつものパターンだ。


「何してるの?レンくん?」


「見てわからない?」


いや、わかってるよ。

君がこのあと望むことも。

でもね、できないの。


「言ったよね?カレシがいるって」


「聞いてないし、知らない」



「こんなことして、楽しい?」


「……………。」


慣れっていうのは怖い。

こんな状況なのに冷静に処理しようと考えることができる。


「ほら、そこ退いて?」


「……んで…?」


あぁ、君を泣かせてしまった。

ごめんね、こんな女で。

ポタポタと君の涙が私の頬に落ちる。

あぁ、君の涙をすくうことができたらどんなに楽か。

ダメだ、こんな汚い手で君に触れちゃ。


「ごめんね」


「…っ!!そんな、こと…ば、ほ、欲しくない!!欲しい、のは「ごめんね、レンくん」


最後まで聞いたら、君に触れてしまいそうになって怖かった。

だから、君の声が聞こえないようにした。


「ミクちゃん、お、俺は…まだ、好きなんだ…好きなんだよ」


「ダメよ、ダメ。レンくんは、ダメ」


「どうして…?」


「私は汚れてるから、ダメ」


「汚れてなんか、ない」


知らないからだよ、君は。

私がどんなことしてるか。

私がどんなに汚いか。


「レンくんは、知らないからだよ」


「俺は…どんな、ミクちゃんでも、好きだ、よ」


そんなことない。

知ったらきっと、軽蔑的な目で見るよ。


「ごめんね」



そう言って、君から逃げるようにベッドから抜け出した。




君のことが好きだから。




だから、私は君から離れるね。

好きだからこそ。

失いたくないからこそ。



“私”という人間から君を守るよ。

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