小ネタ置場

□戦国BASARA:長曾我部元親
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■届かぬ祈り■



行かないでと、

逝かないでと、

笑いながら背を向けるあなたに

縋れれば、叫べればよかったのに


「‥‥戦?」

訝しげに問うた俺に、元親は頷いた。

「おう。ちょっくら一戦な」
「ふーん‥‥誰と」
「魔王」

その言葉に、俺は目を見開いた。茶を煽った格好のまま、動きが停止する。
魔王?魔王って、第六天魔王?織田信長?

「‥‥っ!」

振り返った瞬間、頭にぽんと手を乗せられた。
大きな、温かい手に、俺は思わず口を噤む。
元親は俺を見つめながら、優しく頭を撫でた。

「んな顔すんな。俺が負けると思うか?」
「‥‥っ、だ、だって‥‥っ」

元親は俺を見つめて、目を細めた。どこか嬉しそうで。
俺、今どんな顔してんだろ。
きっと真っ青だろうな。

「俺が、お前を残して死ぬと思うか?」

その言葉に、俺は目を見開くことしかできない。
でも、だって、相手はあの魔王だぞ?
もし、負けたら‥‥──

「心配すんな。絶対戻ってきてやる」

元親の逞しい腕が、俺の男にしては細すぎる身体を抱きしめた。
元親の規則的な心音に、何故か肩の力が緩む。

「帰ってきたら、一晩中可愛がってやるからな」

その言葉に、俺はきっと真っ赤になったはず。
元親は可笑しそうに、小さく笑った。
顔を見られたくなくて、元親の服を握ると顔を埋めた。

「元親様、そろそろお時間です」
「ん?ああ」

元親は俺の顔を上に向かせると、口付けを落とした。
優しく口内に滑り込んでくる元親の舌に、身体から力が抜ける。

「行ってくるな」

もう一度俺を抱きしめて、耳元で囁く。
俺から離れると、笑みを浮かべて背を向けた。
その背が、霞んだ気がして、
俺は目を見開くと、畳についた指に力を込めた。
喉に何かが引っかかって、声が出ない。
静かに閉まる襖を、ただ呆然と見つめていた。
元親を乗せた船が、段々と小さくなっていく。
俺は元親の着物を、ぎゅっと抱きしめた。


逝かないで
連れて逝かないで


知らない何かに、必死で祈った。
数ヵ月後、瀬戸内を流れてきた見るも無残な船に、
泣き叫ぶことも、泣き崩れることもできず、
届かぬ祈りよ、あなたに届け、と。
ただただ必死に、祈り続けた。


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5年近く拍手お礼に居座ってたネタ集その拾。
頭でわかっていても、心がわかってくれない、みたいな。
主人公は一体、元親のどういう位置なんでしょうか。
いや、恋人なんですけど。
最近幼馴染設定にうはうはしてた時期なので幼馴染かね?
そして兄貴死亡フラグ立てすぎww
案外この後兄貴が「生きてた」って帰ってきてあるぇー?ってなってもいい。


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