小ネタ置場

□アイシールド21:金剛阿含
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□薄水色の浴衣の君□



古いアルバムのような、古ぼけた記憶があった。
確か、俺が9‥‥くらいのときだったか。
その日は確か夏祭りの日で。
親や雲水たちと逸れた俺は、焦るわけでもなくただのんびりと人込みを歩いてた。
そろそろ祭りにも飽きてきて、何かないかと竹やぶの中に入ったときだ。
祭囃子の中に混じって聞こえた、誰かのすすり泣く声。
その声に興味を持って、俺は声のする方へ行った。
周りより大きな竹の根元で、薄い水色の浴衣を着た、俺より1つ年下くらいの奴が蹲って泣いてた。
普段の俺だったら、そいつを無視して雲水を探しに戻ったはずだ。
しかし何故かそのときは、そいつが妙に気になって。

『おい、何泣いてやがる』

そいつは俺の声に一瞬肩を震わせると、恐る恐る顔を上げたんだ。
涙で濡れた顔が、今思うとガキのくせに妙に色っぽくて。
大きな目は真っ赤になって、涙が止まらずに溢れていて、顔は真っ赤になっていた。

『おい、どうした』

そいつは一瞬ビクつくと、か細い声で呟いた。

『お、兄ちゃんと‥‥はぐれ‥‥っ』

それだけ言うと、またすすり泣き始めた。
声を上げて泣き喚くわけじゃなく、すすり泣き、時々小さく嗚咽を漏らす。
俺はただ自然に、そいつの隣に座ったんだ。
そいつは驚いたように、元々でかい目をさらにでかくして、俺を見た。

『‥‥お前の兄貴が来るまで、いてやるよ』

普段の俺らしくない俺が、妙に恥ずかしくて。
そいつの涙で冷えた手を、ぎゅっと握ったんだ。
そいつはまた驚いたように目を見開くと、すぐ嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
その笑顔が、何故か脳裏に焼きついて。
30分くらいしてから、高校生ぐらいの男が慌ててこっちに駆け寄ってきた。
隣のそいつは、突然立ち上がると、腕を伸ばしてその高校生に駆け寄った。

『お兄ちゃんっ!』

そいつは甲高い声で叫ぶと、その高校生に抱きついた。
わあわあ声を上げて泣き出したそいつを、兄貴が優しく抱きしめる。
ありがとう、ありがとうと何度もお礼を言うそいつの兄貴にぶっきら棒に返事して、俺は今度こそ雲水たちを探そうと人込みに戻ろうとした。
そのとき、兄貴の足にしがみついてたそいつが、俺の手を握った。

『ありがとう』

嬉しそうに満面の笑みを浮かべて言うそいつに、俺は目を見開いてたと思う。
人込みに紛れるまでずっと俺に手を振っていたそいつを、俺はぼんやりと眺めていた。

今思ったら、名前ぐらい聞いときゃよかった。きっと今頃器量よしに育ってるはず。
白い肌、大きな瞳、薄い桃色の唇、淡い栗色の肩までくらいの髪、目は日本人離れした淡い青色で、‥‥
‥‥‥

阿含はじっと、目の前の自分の恋人を見た。
一年ほど前、女だと思って口説いたのだった。男だったが。
ぱっと見は女のようなのに、悪と恐れられる阿含を恐れず、度胸も据わっていて。
阿含は初めて、傍にいてほしいと思った。
勿論、一度だって口にしたことはないが。

白い肌、大きな瞳、薄い桃色の唇、淡い栗色の肩までくらいの髪、目は日本人離れした淡い青色‥‥

「お前かっ!」
「はっ?!何がだよ?」

突然声を荒げて怒鳴った阿含に、驚いたように肩を跳ねらせて阿含を見る。
大きな瞳、はともかく(はっきり言うと目つきは悪い)、他は全部該当している。
確かこいつの兄貴は、10くらい上だったはず。

「何でこんな風に育ってんだよこのカス!」
「はあっ?!わけわかんねーし!」


きっとあれが

俺の初めての恋


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5年近く拍手お礼に居座ってたネタ集その漆。
今度は青い話をイメージ!
阿含にもこんな頃があったんだよー、みたいな。
今と全然変わってないけどね(コラ)
主人公、性格が激変しているご様子。
最初はBASARAのチカで書こうと思ってたんですが、阿含さんも書きたかったんでw
きっと告白は阿含さんからで、「てめえは俺の傍にいればいいんだよ、カス」とかって、
それで主人公さんは溜息吐きながら、「(素直に好きだって言えよなー)」って思ってんだよ!萌!!
もち主人公覚えておらず。


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