小ネタ置場

□戦国BASARA:猿飛佐助
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■名もなき罪人■



かつん、と小石が転がる音が響いた。
佐助は地下牢へ続く階段を下りると、鉄格子の中の罪人を見つめる。
佐助に気付いたのか、罪人が顔を上げた。

「‥‥佐助様‥‥」

酷く掠れた声で、佐助の名を呟いた。
やつれた、傷だらけの顔に笑みが浮かぶ。
名も知らない罪人に、佐助は眉を寄せた。
彼の目に既に生気はなく、虚ろな目で佐助が映っている。
すべてを諦めた目。
彼は、最初からこの目だった。
他の罪人は、少しの可能性に縋って自分の無実を喚く。
しかし彼は、何もしなかった。
無実を訴えることも、何も。
名前を聞いても、首を横に振るだけだった。
いつも牢獄の隅で、膝を抱えて蹲っている。

彼は見目麗しい。
牢獄の警備を任されている兵の慰み者にされることも、しばしばだ。
それでも、彼は一切反抗しなかった。ただ虚ろな目で、抱かれている。
声を出して喘ぐわけでもなく、泣き叫んで助けを請うわけでもなく。

「‥‥おいで」

佐助が格子を掴むと、彼はするすると近寄ってきた。
彼が動くのは唯一、佐助が彼に逢いに来たときだけだ。
彼は格子の向こうの佐助を見つめると、嬉しそうに目を細めた。
それは、佐助にはただ辛いだけだ。
自分と同じように格子を掴む彼の手に、自分の手を絡めた。
彼はそれを嬉しそうに見つめると、佐助を見上げる。
誘われるまま、その唇に吸い付いた。

「‥‥ん‥‥」

切なげに漏らす声が、ひどく愛おしい。
愛してはいけないと、わかっている。
彼はもうじき、皆の前で腹を掻っ捌き、首を斬り落される身だ。
それでも、愛した。

「ん、‥‥は‥‥」
「‥‥ねぇ」

唇を放しながら、佐助は罪人の耳元で囁く。
彼はぼんやりとした目で、佐助を見た。

「名前、教えてよ」

佐助の言葉に、罪人は哀しそうに顔を伏せ、やがてゆっくりと首を横に振る。
佐助は眉を寄せると、彼の指に絡めた自分の手に力をこめる。

「何で」

強い口調で問うても、罪人は首を横に振る。
佐助は格子に阻まれたまま、罪人を抱きしめた。

「教えてくれ‥‥っ」

縋るように聞いても、罪人は黙って首を横に振る。

「‥‥なあ、逃げないか?俺と一緒に‥‥」

身体を離しながら、引きつった笑みを浮かべて言う。
そんなこと、できないことを、自分自身が一番よくわかっているのに。
彼は哀しそうな目で佐助を見つめると、再び首を横に振った。

「どうして‥‥っ、俺は、俺は‥‥あんたを‥‥っ

愛してるんだ、と続くはずの言葉は、罪人の細い指に阻まれた。
罪人は顔を伏せると、哀しそうな顔で首を横に振る。
佐助は悔しげに歯軋りすると、さっと階段を駆け上っていった。
罪人はただただ哀しそうな目で、佐助の背を見送った。

「佐助、九州への密偵を命ずる」

信玄の言葉に、佐助は冷えた目で畳の網目を見つめる。

「‥‥御意」

小さく呟くと、さっと姿を消した。向かうは九州。
確か彼の切腹の日は、四月後のはず。
今度こそ、彼の名前を聞きだそう。
そう心に誓って、佐助は太い木の枝を力強く蹴った。
佐助の愛した罪人が、突然早まった切腹の前日、牢獄の中で舌を噛み切って死んだのは、
佐助が甲斐に戻ってくる、二日前のことだった。


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5年近く拍手お礼に居座ってたネタ集その陸。
え、暗っ!暗いよオイ!
許されぬ愛をイメージしてみました(恥っ!)
つか戦国時代の牢屋って、牢獄でもいけるんでしょうか?
なんかそこんとこよくわかんないんですけど、まいっか(ヲイ)
彼の罪は何でしょうか、って全然考えてないんですけど
濡れ衣だった、とかいいんでね?とか考えてます
大事な親友のために一役買ったら、その親友に裏切られた、みたいな。
そして出逢った佐助と愛し合った、みたいなあははは(何)
彼が自殺した理由は、‥‥佐助さんに見届けてもらえないからぐらいでいいんじゃね?(むっちゃアバウト)
とりあえず佐助さん絡みだとよいよ(適当だな)


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