小ネタ置場
□戦国無双:直江兼続
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■君の隣■
あんたの隣は、居心地が悪い。
暗殺を業とする俺に熱く義を語るあんたが、すっごい苦手。
俺の仕事、知ってんだろ?
暗殺に、義も愛もへったくれもない。
何で、何で俺にそんな話するんだよ。
「そして私は三成と幸村という素晴らしい友ができたのだ!!」
「へぇーそう。よかったですねぇ」
興味なさそうな返事をすれば、あんたは俺を睨む。
なさそうなって言うか、正味まったく興味ないんだけど。
「‥‥ちゃんと聞いているのか」
「聞いてますよー。もつ鍋と太刀魚が友達なんでしょ?」
「どんな聞き間違いをしているのだお前は!」
俺に向かって怒鳴る兼続様に、思わず溜息を吐いた。
「ちょっと兼続様、そんな怒鳴んなくったって聞こえてますって」
「大体お前は、もっと人の話を‥‥」
あーあ、始まったよ兼続様のお小言。長いんだよなぁ。
寝てもいいかな。目ぇ開けてたらわかんないだろ。
でもそれって絵面的に気持ち悪いな。まいっか。
「わかったか‥‥って寝るな!」
「ぎゃっ」
耳元で、しかも大声で怒鳴られた。
頭きーんってなってんですけどちょっと。
ん?もう夕方じゃねえか。何、この人何刻喋ってたの。
しかも寝てる相手に一人で。うわー痛い。この人痛いよー。
「何を笑っている!」
「いやー、一人でずっと喋り続けてたって‥‥痛いなーと思って」
「寝ていたのはお前だろう!!」
顔を真っ赤にして怒鳴るあんたは、俺の恰好の遊び道具。
いやー、楽しいねぇ、この人。からかい甲斐があるっていうか。
つか暇人だな、おい。本当に武将?あ、軍師か。
「つーか俺もう帰っていいっすか?仕事あるんで」
「む、もうそんな時間か?」
あんたはいつも俺がこう言うと、残念そうに顔を伏せる。
何なんだよ。俺なんかいけないことでも言ったか?
「んじゃ、軍師のお仕事頑張ってくださいねー」
背中を向けてひらひらと、あんたに向かって手を振る。
「待て」
「んぁ?」
呼び止められて、腕を掴まれた、瞬間、
目の前いっぱいに、兼続様の顔があった。
あー、近くで見ると本当整った顔をしてるよなー。
俺の唇は何か柔らかいものに塞がれていて、‥‥
‥‥‥は?
「って、何すんですかあんた!!」
我に返った瞬間、思いっきり突き飛ばしていた。
「何って、接吻だ」
しれ、と言い返すあんたが、無性に腹が立つ。
「何でしたんですか!」
「何故って」
兼続様は、不思議そうに首を傾げた。
「愛しいと想う者に接吻して、何が悪い」
その言葉に、俺の頭の中の機能が全部停止した。
男同士だろ、とか選択権はねえのか、とか俺に拒否権なしか、とか、とか、
ぐるぐるしてたら、またあんたが顔を近づけてきて。
その頬を思いっきり引っ叩いてやった。
頬を押さえて悶絶しているのを無視して、そのまま謝罪もせず、振り返りもせずに走り出した。
顔が、熱い。死にそうだ。くそ、最悪だ。何が最悪って。
全然嫌がってない俺。
あーこんなんで仕事できんのかよ、とか愚痴零しながらも、嬉しくて。
それでも仕事はさぼれない。金貰ってるしね。
夜の闇に紛れて、今日の標的を待ち構える。
明日は俺からしてやろう。どんな顔するかなあの人、とか思ってたら、標的発見。
名前は知らない。興味ない。外見的な特徴で判断する。
間違ってたらごめんね、ってことで。
「斬捨て御免」
小さく囁いて、刀を振り下ろす。
その刀を、弾かれた。俺は驚いて目を見開く。
なんだよ、こいつ武将かよ。聞いてねえぞおい。
とか頭の中で愚痴ってたら、俺の顔を見た標的が一瞬動きを止めた。
好機は逃さない。躊躇いなく、そいつの喉を斬り裂いた。
顔に掛かる返り血にも、不快感はない。
そいつの顔を拝もうと振り返った瞬間、ただただ目を見開いた。
「‥‥か、ねつぐ‥‥さ‥‥ま‥‥」
我ながら情けない声だった。
路地に横たわったあんたは、俺を見上げた。
斬り裂いたあんたの喉から、ひゅーひゅーと空気が漏れる音が聞こえる。
あんたは俺を見て、確かに笑ったんだ。
確かにはっきりと、口の動きが「愛してる」と。
足から力が抜けていくのがわかった。
膝を路地に強かに打ちつける。
嗚呼、痛い
何が痛いって、胸が
「兼続‥‥様‥‥」
もう動かないあんたを、俺はずっと揺さぶってた。
嗚呼、義を語るあんたの隣は、
居心地は悪かったけど、どこか暖かくて
ずっとあんたの隣にいれると、思ってました
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5年近く拍手お礼に居座ってたネタ集その捌。
戦国無双いぇーい(どうした)
久々の兼続さんです。ごめんなさい(早)
きっと主人公は慶次さんの友人です。
兼続さんと何回か会ってる内に、仲よくなった、みたいな。
三成さんたちとは面識ないと思います。
主人公が「もつ鍋」って言ったのは、龍瀬が「みつ」を「もつ」と打ち間違えたからです(ちょ)
ていうか太刀魚どっから出てきた。
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