夢じゃ友達は少ない

□Let's hanting!
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「やっぱりゲームだと思うのだ」


隣人部創設三日目。
唐突に夜空が言った。
部室には俺と小鷹と夜空の他、昨日入部した柏崎星奈もいて、何故か部室にティーセットを持ち込み茶をすすっている。


「はあ?ゲーム?」


星奈が不機嫌そうに紅茶を机に置いて言う。


「夜空……だからゲームで釣れるのは子供くらいだって」


小鷹が言うと、夜空は小馬鹿にするような顔をした。なんでいちいちこんな顔するんだ腹立つな。


「甘いな小鷹。今どきの高校生が遊ぶゲームの主流は、スーパーファルコンとかオメガドライブなどの家でやるタイプではないのだ」


なぜ家庭用テレビゲームの代表例として抜き出したのが俺たちの親の世代のゲームなんだよ。今どきの高校生がやるゲーム機じゃないし、古い。


「……スーパーファルコンとかオメガドライブって何?」


小鷹は小鷹で名前を知らないのもどうかとは思うけどな。


「知ってる据え置き型ゲーム機の名前を適当に言っただけだ。『スーパー』だの『オメガ』だの付くんだからきっと凄いんだろう」


ああ、凄く壊れやすいよな。


「確かに名前は凄そうだな」

「名前が凄うても機能はシンプルやけどな」

「って、そんなことはどうでもいい!」


夜空はばんと机を叩く。
その衝撃で星奈の前に置かれたティーカップから中身が撥ねて星奈の手にかかった。


「あつっ!なにすんのよキツネ女!」

「ちっ……倒れなかったか……」

「わざとやったの!?最悪ねあんた!」

「ん?なんのことだ?それよりゲームの話だ」

「落ち着けや。ほれ、ティッシュ貸したるからさっさと拭け」

「……気が利くわねあんた。もしかしてやっぱ下僕になりたいわけ?」

「いや、憐れな肉玉菌にせめてもの情けや」

「……あんたもあんたで最悪な性格だわ」


涙目になって抗議する星奈をさらりとスルー。
誰が進んで下僕になんぞなるか。俺が使えるのはただ一人、マリア以外に適する存在など在りはしない。
夜空は鞄の中を漁り始める。


「最近のゲームの主流は……これだ!」


夜空が取り出したのは携帯ゲーム機だった。
これはさすがに小鷹でもわかるだろう。
プレイングステイツポータブル(PSP)だ。
ちなみに既に入手済み。


「昨日一人でファミレスに行ったら後ろの席がやけに騒がしくてとても不愉快だったが、見たら四人の高校生が楽しそうにこれをやっていた」


そういえば一人でファミレスに入ったことないな……と関係ないことを思った。だって、ファミレスに一人で行くなんて並みの根性の人がすることじゃないでしょ。


「どうやら今どきの高校生の間では、ファミレスとかで携帯ゲームを持ち寄ってプレイするのが流行っているらしい」

「だからなによ?」


星奈がどうでもよさそうに聞くと夜空はPSPの電源を入れた。
スリープモードだったらしく、すぐにゲーム画面が表示される。


「ファミレスで高校生どもがやってたのはこの『モンスター狩人』というゲームだった。調べてみたら今すごく流行ってるようだ」


そのゲームについては俺も現役狩人なので隅々まで知っている。
モンスター狩人──通称『モン狩』。
ファンタジー世界の狩人となり、高原や砂漠や山を舞台にモンスターや動物を狩るというハンティングアクションゲームである。
余談だが、このゲームは据え置き型のプレイングステイツ2でデビュー作品として発売されたが、『難しすぎる、モンスターの設定が強すぎる』などの苦情が出てきたため、このポータブルはやり易い形式に変更された。
だっておかしいもん、鎧の防御力にモンスターの攻撃力が見合ってないもん。


「このゲームは他の人間と協力して遊ぶことができる。上手いプレイヤーは他のプレイヤーから頼られるから、ゲームをやってるうちにいつのまにか仲良くなれるというわけだ。それにアイテムの交換もできるから、『このアイテムが欲しいんだけど持ってない?』とか『このレアアイテムとそのアイテム交換しない?』みたいな感じで話しかけるきっかけも作りやすい」

「……そういえば、うちのクラスの女子にもやってる子がいたわね。最近は女の子でもゲームするみたい」


星奈が言った。


「つまりこの部活でゲームの腕を磨いたりレアアイテムを手に入れて、友達を作ろうってわけなんやな?」


俺が言うと夜空は頷いた。
そんなに上手くいくものなのかと疑問に思ったものの、とりあえず具体的な活動をしてみるというのはいいことだと思う。


「では来週の月曜日、PSPとモン狩を持ってくること」

「ふん、仕方ないわね……ゲームなんて興味ないし面倒だしあんたのアイデアに乗ってあげるのが気に入らないしあんたの顔が気に入らないしあんたの存在自体が気に入らないけど仕方ないから付き合ってあげるわ」

「あ、蚊がいる(超棒読み)」

「あ、ホンマや」


べち。
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