夢じゃ友達は少ない

□残念金髪美少女
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ポスターを貼った翌日の放課後。
俺と小鷹と夜空はきょうも隣人部の部室へとやってきた。
ソファにふんぞり返り夜空はふてぶてしい笑みを浮かべる。なんか初めてだよ、こんなに女子の笑みを見て腹立つの。


「いよいよ今日から本格的に活動開始だ」

「具体的な活動内容を決める活動をな」

「活動って言い切れるのかさえ微妙やけどな」


俺と小鷹は未だにこの部で具体的に何をすればいいのか、明確なビジョンがまったく想像できないでいる。
……そもそもこんな部に入ってしまって本当によかったのかどうかも疑問だがな。


「私は上辺だけの友達がいればいいから、部員さえ集まってくれればいいんだ。つまり昨日の時点でやるべきことはやったということだな」

「……あのポスターを見て入部しようと思う奴がいるとはどうしても思えないんだが」

「小鷹ちゃんの言うとおりやで。そもそも誰であったとしても、あんな文面の内容から『ともだち募集』が読み取れるとは到底考えられへんけどな」

「まだそんなことを言ってるのか?あのポスターに釣られて今にも学園中友達を求める寂しい子羊どもが迷い込んでくるに決まっている」

「その自信はどこからわいてくるんだ?」

「根拠もあれへんのによう断言できるな」


俺たちは心底不思議に思った。
と、そのとき。


──コンコン。


部室の扉がノックされた。


「──ッ!?」「──!」「──マジで!?」


俺たちは三人で思わず顔を見合わせた。


「どうやら早くも新入部員が現れたようだな」


夜空が勝ち誇った声で言いながら口角を少し上げる。


「……まさか。どうせ顧問の先生とかだろ」

「せやで。マーちゃんが俺に会いに来たに決まっとるやないか」


小鷹と夜空は二人して立ち上がり、部室のドアを開いた。
そこに立っていたのは金髪碧眼の女子生徒だった。
すらっとした細身ながら胸は大きいというグラビアアイドルみたいなスタイルで、ちょっとだけ目つきがキツい印象はあるが顔立ちもやたら整っており、どことなく気品が感じられる。
顔は(顔だけは)いいのに鬱っぽい表情や仕草でそれを台無しにしている夜空と比べ、華やかさが段違いの、掛け値なしの美少女である。
しかし、俺は気にくわないな。そのたわわに実って揺れる二つの柔らか果実が!この貧乳至上主義の俺様を挑発しているのかこいつ。
中等部の未成熟な胸を見て出直してこい。
制服に付けられた校章の色から、俺たちと同じ二年生だとわかる。


「隣人部っていうのはここね?入部したいんだけど」


少女が言った。


「「違う」」


ばたん!
がちゃん!


俺と夜空は即答すると何事もなかったかのようにソファへと戻り、


「さて、部活を始めるか」

「せやな。活動内容は早く決めんとあかんし」

「いや待てって!今の入部希望者っぽかったぞ!?しかも女で二年生だったから夜空の友達にぴったりじゃないか」

「ははは!何をおかしな言ってるんだろうなあの黄土色ヤンキーは。同性の親友ならもういるのにな、トモちゃん」

「小鷹ちゃんやって見たやろ?あないな危険な爆弾を二つも抱えて来る奴を室内に入れるわけにはいかんやろ」


うっかりときめいてしまいそうな笑顔でトモちゃんと喋り始めた夜空を横目で見ながら落ち着きのない小鷹を説得する。


「おいおい……」


どうやら黄土色ヤンキーという言葉に少し機嫌を損なったようだ。
ドンドンと先ほどの少女がドアを叩いている。
怒鳴り声も聞こえるが、この部屋は防音設備が割りとしっかりしているので何を言っているのかはわからない。
俺と夜空は煩わしげに立ち上がり、再びドアを開く。


「ちょっと何で閉めるのよ!あたしは入部──」
「「リア充(巨乳)は死ね!」」


ばたん!
がちゃん!


ヒロインとイケメンが言ってはいけない類いの発言をして、夜空はまたドアを閉めてしまった。
少女の唖然とした顔がちょっとだけ見えた。


「……なあ、もしかしてあの子と知り合いなのか?」


再びソファに座り直す二人に俺は尋ねた。


「知り合いではない。顔と名前は知ってるけど喋ったことはないから」

「俺は知らんけど、何か見たことある顔やったなあ……まあ、顔は好きやけど巨乳は嫌いやから覚えとらん」


言いながら、夜空は鞄の中から一冊の本を取り出した。俺も思わず怒りの心中を吐露する。
不機嫌そうに夜空は言う。


「2年3組の柏崎星奈……この学園の一人娘だ。いつも男子生徒にちやほやされているお嬢様気取りのいけ好かないやつ」

「思い出した。確かそんな名前やったなあ。あの高飛車な性格はホンマに腹立つわ」

「……理事長の名前が日本人だから、あんな金髪の娘だとは思わなかったな……」


小鷹がぽつりと呟くと夜空はギロリと俺たちを睨んだ。ていうか、なぜ何も言ってない俺まで睨まれてるの?
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