空白の一年捏造虎兎

□愛執の日々
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離れていて思い知った。
自分の中に占める虎徹のウェイトを。
なにもかもを彼に求めるのは間違いだと分かっている。
しかし、絶対他人に譲りたくない立場がある。
虎徹にとっての『恋人』と『相棒』の地位だ。
相棒の方は、虎徹が引退したのでもう誰にも侵せない領域となった。
しかし、恋人の方はいつ誰にひっくり返されるか分からない。
本当は、彼から片時も離れたくはない。
でもそんな我が儘を言えるほど子供でもないのだ。
「虎徹さん…」
バーナビーの心は千々に乱れた。


待ちかねたような、避けたかったような、虎徹が訪ねてくるその日は来た。
ヒーローを辞めてから半年以上が経ち、バーナビー・ブルックス・Jr.というヒーローは過去の人物となりつつある。
とはいえ、あの赤いジャケットと持ち前の金髪で出歩くのは面倒なことになりそうで、やめていた。
長めの金髪は大方の前髪と共にハーフアップにし、ジーンズと、目立たない白いシャツの襟を立てて着こなしたスタイルで虎徹を迎えに行く。
「もうそろそろだな」
改札の前で流れて来る人々の中に虎徹を探す。
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