空白の一年捏造虎兎

□温かな日々
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父はいつまでも幼稚園児ぐらいだと思っているようだが、父親と離れて暮らしている上、母親は小さな頃に亡くなるという結構重い人生を生きてきた楓は、まわりの同い年のクラスメイトに比べて大人だった。
女の子で11歳ともなれば、立派に大人の事情もわかる。
少なくとも今までは、父に付き合っている相手がいるような感じはなかったし自分以外の人間と、にやけ顔で電話するなどということ自体なかった。
実は楓とバーナビーは、ごくたまにメールのやり取りをしていた。
この間の訪問も、連絡があったので知っていた。
シュテルンビルトのメディアと一部企業に大打撃を与えたマーベリック事件をリアルタイムで共に乗り越えた仲間として、バーナビーとは親戚のお兄さんのような付き合いだ。
その簡潔な行間に父への思慕が見て取れて、事件の際のバーナビーの行動のあれこれと照らして鑑みるに、バーナビーは父に本気だろうし、父もバーナビーを大事にしているのだろうという結論に至った。
たとえ同性でも、歳が離れていても、バーナビーの方が、突然現れたどこの馬の骨とも知らない女に父を取られ、母親面されるよりは万倍マシだと思う。
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