空白の一年捏造虎兎

□平穏な日々
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「鏑木酒店さんはどの辺りですか?」
「え?それ、うちだけど…」
目の前の、キャップを被る男にはなんだか見覚えがある。
服装は、まるでスカイハイ…キースの普段着のようだ。顔の見えないキャップの下は、ひと纏めにされた金髪。
「あれ?」
自分はこの男を知っている。
「ふふっ」
押さえられないといった感じの含み笑いと共に、男がキャップを取って正面から虎徹を見た。
白い肌、小さな整った顔立ち、日の光を受けてキラキラ輝く眼鏡の奥の翡翠の瞳。
「…バニー?」
「はい。久しぶりですね虎徹さん」
嬉しそうに、弾けるような全開の笑顔。
突然の予期せぬ再会に、虎徹は呆然とした。
「なんでお前がここに居んの?」
「僕の…修行というか…それが終わったので、真っ先に虎徹さんに会いに来ました」
「お前…突然すぎんだよ!連絡ぐらいしろ!それに、帽子はかぶらない主義じゃなかったっけか?」
「変装してるんですよ。よく覚えてますね」
「当たり前だろ。…ひとを驚かせやがって」
もう世間はとっくに、自分たちのことなど忘れているはずだ。
シュテルンビルト市民の 興味の対象は移ろいやすく、新しいものが持て囃される。
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