空白の一年捏造虎兎

□愛執の日々
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「えっ、いま何て?」
『うん、だから来週あたりバニーのとこに泊まりに行ってもいいかって』
半年以上ぶりに、虎徹が泊まりにくる。
『都合悪いなら、またにするけど?』
「と、とんでもない!都合いいです!いつでも大歓迎ですから!」
慌ててそう言うと、向こうで虎徹が笑う。
『バニーちゃん、必死すぎ』
携帯電話なのだから当然だが、耳元で虎徹が笑うのを聞くのは少し辛い。
今、彼はここに居ない。
なのに身体は勝手に反応しそうになって。
「何日の何時ごろ着きます?」
逸る気持ちを抑えながら聞き、メモをとる。
「わかりました。迎えに行きます」
『あ、バニー』
「はい?」
『散々お預け喰ったから、ガッツリ取り返させてもらうぞ』
「え…えっ!?それって…」
『ははっ!じゃあな』
「ちょ、虎徹さ…」
問いただす前に、ブツリと通話は切れた。
バーナビーは携帯電話をしばらく呆然と眺め、次いでボッと赤くなった。
「…っ…あの人は…」
いつもそうだ。
実にさり気なく、息をするのと同じように、あらゆる手段でバーナビーの心を攫っていく。
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