長編

□オモイのカケラ
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ある森の中の小さな川のほとり、手作りの木の家に2人の人間が住んでいました。

正直者で誰にでも温かく接する女の子直と、
一見近寄り難いけど実は相手を尊重し何よりも直を大切にしている秋山という男の人です。

2人は近くの集落から少し離れた、自然がたくさんのこの地でお互いを想い合い、幸せに暮らしていました。



そんなある日。
滅多に来ない来客が2人の家を訪れました。

―――コンコンッ

「?誰だろう?私出ますね!」

入口の近くにいた直が「はいはーい」と言ってドアを開けました。

相手を確認しないまま開けてしまうのはいつものことです。

しかし今まで何の問題もありませんでした。
だって尋ねてくるのは集落のお友達くらいでしたから。

だから問題はなかったのです―――

今までは。



ドアの先にいたのは黒い帽子を深く被った白と黒の服を着た女の人。
金色の髪が波打っていて綺麗です。

「?こんにちは」

知らない人でしたが直は家に招きいれようとしました。
旅人さんが道に迷ってしまったのかもしれませんから。
しかし女の人は動きません。
ただ静かに手を動かし、持っていた鏡を直に向けました。

「え?」

直は鏡に映った自分を見た途端、くらりと眩暈のようなものを感じました。

ぐるぐると視界が歪み、力が抜ける感覚にドアにもたれ掛かり眼を瞑ったところで、

「直!?」

秋山が出てきました。

声もしないし、戻ってもこない直を心配して様子を見に来たのです。

秋山は直と女の人の間に立ち、なんとなく鏡のせいかと考え女の手から払いのけました。

すると鏡は簡単に落ちて割れ、破片は全て消えてしまいました。

割れた瞬間目に痛みを感じた秋山は破片が刺さったのかと思いましたが、その痛みは一瞬で消えたため気のせいと思い直します。


目を開けたときには女の人はいなくなっており、直も秋山の陰に居たため何が起こったかよく分かりませんでした。
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