short story

□てのひらの力
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4回戦本戦イス取りゲームは、秋山さんの作戦通りデブさんが最終勝者となり、私たちに協力してくれたガヤ連合の人たちも賞金を得ることができた。

行きと同じく景色を遮断された船で港まで戻り、アカギさんやフクナガさん達に別れを告げバスに乗り込む。
予選・本戦と立て続けだったせいか、それとも島中を走り回ったせいか、バスが動き出すとすぐに深い眠りに落ちていった。


「・・・ぃ、ぉい、起きろ」
肩を揺すられ、意識が浮上する。
「降りるぞ」
いつの間にかバスは止まっていたらしい。
中途半端に寝たせいか少し頭が痛かった。
事務局員は敗者復活戦については後日連絡があることを告げ、バスは去って行った。

「・・・顔色が悪い。体調悪いんじゃないか?」
秋山さんにご挨拶、と思い振り返れば、私の顔を見ると顔を曇らせそう言った。
――そんなに悪く見えるのだろうか。頭痛もそれほどではないのに。
「少し頭は痛いですけど、さっき寝ちゃったせいだと思います。時間が経てば大丈夫ですよ」
「・・・・送る」
押し黙ったあとそう呟き、くるりと向きを変える。
さっさと歩きだした秋山さんを私は慌てて追いかけた。

「頭痛だけか?他に身体がだるいとか、気分が悪いとか」
「――身体は少しだるいですけど、きっと走り回ったからですよ」
「・・・水分はきちんと取っていたよな?」

ゲーム中秋山さんは水分補給と適度な休憩を取ることを強く指示していた。
だから私もアベさんに一度お水をあげたことはあったが、その他はしっかりとっていた。
「―まぁ、もともと体力がないからな。熱中症になりかけかもしれない」


家に着くと楽な格好に着替えるよう指示し、秋山さんはキッチンで何かしているようだ。
シャワーを浴びたかったが代わりにお湯で温められ硬く絞ったタオルを渡され、身体を拭き大人しくベッドに横になる。
私が着替えたことを確認した秋山さんは掛け布団を数回折り畳み、その上に私の足を乗せた。
「顔色が悪いから足は少し上げた状態の方がいい。それと、これ」
氷水で冷やした濡れタオルが額に置かれる。頭痛があるせいかとても気持ちいい。
「寒いと思ったらどけろ、それまでは冷やしとけ。あと、飲み物買いに行ってくるから鍵借りるぞ」
「え、お水ありますよ?」
「こういう時はスポーツドリンクの方がいい。すぐ帰ってくるけど、ちゃんと寝てろよ。何かあったら電話しろ」

ぽんぽん、と頭に軽く触れ秋山さんは出かけていった。
秋山さんも疲れているはずなのに・・・申し訳なさが込み上げる。

それでも身体は休息を求めているようで、意識はだんだんと沈んでいった。



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