short story

□てのひらの力
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目が覚めたとき、部屋の中は暗く、窓から入る光で天井が淡く照らされていた。
ずいぶん時間が経っていることは明らかだが、額に乗せられているタオルは冷たいままだった。
もしかして、と思いそっと身体を起こせばキッチンの明かりが付いていることに気付く。

「・・・・秋山さん?」
思ったより小さな声になってしまったが、彼に届いたようでこちらに来てくれる。
「もう大丈夫なのか?」
「はい。秋山さん、ずっと付いててくれたんですね、すみません」
寝る前にあった頭痛は消え、気分もスッキリしている。
「いや、気にするな。それと一応水分は取っておいたほうがいい。ちょっと待ってろ」
額に乗せていたタオルを渡し、キッチンに向かう後ろ姿を見る。

言われて気付くが、そういえば喉が渇いている。
一気飲みはするなと言われたので何回かに分けて飲んだ。
「全部飲んじゃいました」
「身体の中の水分が減ってたんだろう。顔色も戻ったし、大丈夫そうだな」
「はい・・・ダメですね、私。体力もないなんて――」
「まぁ、あるに越したことはないけど。今回は睡眠時間も少なかったし、あの状況だからな」
でもそうは言っていられない。
いくら騙し合いが基本とは言え、今回のように体力が必要となるゲームが今後ないとは言い切れない。

「ま、お前は筋力がつきにくいタイプだろうし、それよりも大事なものを持ってるからそれでいい」
「大事なもの、ですか?」
「正直さと人を信じること。後は最近前向きになってきたことか?フクナガも驚いてたぞ」
昨日の夜の――アカギさんの部屋での話し合いのことだろうか。

「アベともつながりが持てた。それはお前の力だし、今後戦っていくなかでそれが役に立つ時がきっとくるはずだ」
「・・・秋山さん、この世に必要じゃない人間なんて、いませんよね?きっとみんな、ここにいることに意味はありますよね?」
アベさんが自分は役に立たない、ダメな人間だと言った時、とても悲しい目をしていた。
仲間がいて尊敬している人がいるのに、どうして必要じゃないなんて思ったんだろう。

「・・・・お前がそう思うなら、それでいいだろ。自分の信じるものに自信を持て」
そう言ってくれた秋山さんの顔もどこか淋しげで、きゅっと胸が締まる。

―――そうだ、信じよう。
秋山さんも、信じることが大事なものだと言ってくれた。

「じゃあ、俺は帰るから。また何かあったら連絡しろ」
「はい!秋山さん本当にありがとうございました」
小さく笑い、秋山さんは帰っていった。

一人になった部屋で考える。
取り巻く現状全てから救うなんてことはできないのかもしれない。
でもあんな悲しい顔をしなくて済むように、私にできることが何かあるはず。

そのためには――こんなことで迷ってちゃダメだわ。
どんなゲームでも私たちはきっと信じあえる。
私がそう信じることから始めようと、心に強く誓った。








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4回戦本戦は走り回ってばかりだったので大丈夫かな、と思いました。

あ、熱中症の処置方法はネットで軽く調べた程度ですので間違ってるかもしれません><
鵜呑みにされないようにお願いします;;;

原作も連載再開が近いようですし、楽しみです^^

2011/8/17
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