【幕恋宵物語】

□石に花を咲かせたい
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『……』


何で、こうなったのか…

思い出せないほどに深酒を過した覚えはないけれど、いつになく進みは早かった気はする


…するけど


─こんな状態になっているなんて…あり得ないっス


少しはだけた胸板に、顔を埋めた体勢のまま背中に回された腕にぐっと抑え込まれ、身動き一つ出来ないなんて…


目線だけを動かし、下から窺い見ると…柔らかく閉じた瞼と、規則的に繰り返す呼吸


……これは、どう見たって完全に寝てるっス



─な・の・にっ


何で、この腕は、ぜんっぜんっ、緩まないんだよっ!


腕の中でじたばたと必死にもがく


『ん〜…』


─っ!? お、起きた?

はぁ、これで漸く解放される…


と、安堵したのも束の間

さっきよりも更に腕に力を込められ、これは最早拘束されてると言った状態で、僅かな身動ぎも儘ならなくなってしまう


『…りょ、龍馬さんっ!いい加減起きて下さい!龍馬さんっっ!』


一旦寝付いた龍馬さんが、簡単に起きてくれないのは嫌という程知ってる


だからこの呼び掛けが、どれだけ徒労に終わるのかも重々分かっている

…でも、今の俺に残された唯一の手段は、声に頼る位しかなくて…


『龍馬さん?…ねぇ、龍馬さん!起きてよ龍馬さん!……このっ、龍馬ぁぁぁぁぁっ!!』


焦れたあまり辺りも憚らず大声で名前を呼ぶ…すると


『……ん、ん〜?…』


─っ!?

渾身の叫びが、通じた!?


期待を込めて見つめる先で俺を抱えたまま、もぞりと身体が動き

重そうな瞼がゆっくりと、薄く開く


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