【幕恋夢物語】
□―隷従―
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「…楽になりてぇか?」
低く覗き込むように問い掛ける
和かな瞳に緩く上がる口角が、謳うように誘うように、ゆっくりと…
ずきずきと訴え続ける鈍痛を無理に押しやり、一度だけ首を横に向ける
「なるほど、こいつぁ見上げた根性だ」
うんうんと頷く
だがな、といきなり頭を掴まれ引き下げられる
「っ!!」
荒縄で固定されたままの手首がギリリと軋み、薄皮を裂く
「悪いが助けはこねぇ、そして俺も止めてやるつもりもねぇ…分かるか?せっかく楽にしてやろぅって言ってんだ、強情張って何の得があるんだ?」
それでも、朦朧とする意識の欠片を手繰り寄せ…抗う
言ってはいけない
話してはいけない
なけなしの良心で覆い隠し、甘ったるい誘惑を遮断する
突然ぐるりと天地が返った感覚に、一瞬状況が掴めずにいたが
次いで訪れた息苦しい重みで、ようやっと自分がうつ伏せに引き倒された事を理解した
「気の強ぇ女は嫌いじゃねぇがな。…話しちまいたくなるやり方なら、他にもあるさ、試してやろうか?」
引き攣ったように口の端を歪め、にやりと嗤う
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