めいん

□終焉恋理論
1ページ/1ページ



信用とか信頼とか良く分かんない。

僕が彼を必要としているのは絶対で、でも依存とはまた違う。

ぐるぐる廻って鍋の中。

どろどろ巡って胃の中。

逆流する咽ぶこの聲も全部虚無だと分かってた。

喪失的失踪を留める力も意思もない。


彼が僕を必要としてる証もない。

ヘテロでない僕らは其を体に刻む資格も無い。

ぽたぽた垂れるは誰の夢。

ぼてぼて墜ちるは誰の愛。


止めどない塩辛い水も全部虚空だと解っていた。

排他的依存を何処かで求めていた。

ほら、触れる癒える寂しさも。

ほら、見える消える悲しさも。


繰り返して繰り返して。

気が遠くなる程繰り返し。

傷付けて傷付いて。

繋いで離して。

そうして1つの個体に成りたい。

信用も信頼も超越した物質に生りたい。

そうすれば何か変わるのかな。


「雄二」


「……んだよ」


欠落した何か欠片を見なかったかい。

何処かに置いてきたのかも。

墜ちる音を聴いたんだ。


「…馬鹿言ってないで目醒ませ」


足りない足りない僕の中に満たされない。

亡くしたものは戻らない。

熱がない。

あの頃一人に向けた熱情が。


「…消したのはお前だろ」


どうしようもなかった。

他に手は無かった。

投げる強さも捨てる狡さも僕には無かった。


「…結局信用も信頼もしてなかったんだろ」


分からない。

其が何かも解らない。

握り返す手を夢見るほど僕は愚かじゃない。


「…逃げた、だけだろ」


手の中にはいつかの鍋。

ぐるぐる廻しかき混ぜる。


「…向き合えよ、全部」


喉を伝い胃の中へ。

どろどろ巡り全てを満たす。


此が僕の欠けた何か。

逆流する咽ぶ聲は彼への想い。

隠した癒した逃がした消したのは僕自身。


ぽたぽた垂れる涙が冷たい。

ぼてぼて墜ちる心の鍍金。


「…忘れるなんて亡くすなんて赦さねぇ」


ごめんね、ただいま。


そして、おはよう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ