めいん

□ふたりぼっち
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誰も居なくなった教室で二人っきり。

二年生になってグッと増えた状況。

ある時は鉄人の補習帰り。

ある時は試験召喚戦争の作戦会議。

または今日みたいにすることも無く時間を持て余している時。


再びAクラスに負けた僕らはやる気もせず唯自堕落に過ごしていた。

次の為に勉強、と言われても近く試験が有るわけでもなく。

食費に金を当て始めた僕は新作ゲームも買っていない。

家に帰ってもすることも無く時間を潰すだけ。

雄二もきっとそんなもんだ。



ロッカーに寄っ掛かりボーと虚を見ている雄二。

いつもの虚勢も虚栄も無い緩みきった顔。

僕の前ではそんな顔もしてくれるんだね、なんて。

思ってみるけど分かっている。


今の雄二の世界に僕はいない。


雄二が見ている世界を僕が見ることは出来ない。

そりゃあそうだ。

僕らは個別の単体なんだから。


でも何故か、1人置いて行かれてる気がして僕は雄二に声掛ける。

「雄二って、何でも持ってるよね」


何でこの言葉が出たのかはは解らない。

唯適当に喉を点いて出たのがこれだった。

穹を見ていた雄二がゆっくりと僕を仰ぐ。

その表情は露骨に嫌そうで。

下らない玩具を見る眼で僕を見てくる。


「だって力もあるしさ背も高いし。何だかんだで頭も良いし。美人な幼馴染みもいるしさ」


まぁ全部僕には敵わないんだけどね。

そう続ければ雄二は少しだけ表情を崩し、自嘲気味に吐き出す。


「お前は何も持っていないよな」


失礼極まり無いことを宣う雄二に殺意が湧いた。

雄二の視線はまた虚をさ迷う。

その瞳に何を写しているのか到底僕には解らない。

だから、余計に雄二の事が知りたくて耳を済ませて次の言葉を待つ。

「だけどお前は、俺が欲しくて堪らないものを幾つも持っている」


他の全てを手放してでも手に入れられなかった物を。


その小さな声は穹に滲みながらも確かに僕の鼓膜を揺らした。


「そしたら、僕ら二人で居たら完全無敵じゃない?」


足りないものを補い合って。

二人で歩けたらいつまでも。


「ばかじゃねぇの」


そう呟く雄二の声が、二人っきりの教室に優しく響く。

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