めいん

□少年渇望
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誰も居ない屋上で。

僕は大切な彼に愛の告白をした。

その張り裂けんばかりの想いを総てぶちまけた。


焼け付く様な夕陽に熔ける雄二の姿。

何処かに消えてしまいそうで思わず雄二の手を握る。

暖かい日溜まりのような温度。

何も言わず僕が総て出しきるまで静に聴いてくれた。


そして、ゆっくりと答えを吐き出す。


「お前の、その感情は間違いなんだ。

思春期特有の刷り込みってヤツであって決して本物の愛では無いんだ。

いつか消え去る感情なんだ。

その時気まずくならないように今は我慢するべきだ」


僕の想像していたモノとは比べられない難しい答え。

でも何と無く理解してしまった。

雄二はそうやって、理屈を捏ねてオトナぶっるけど本当は逃げているだけなんだ。

それに気づいているのに見ない振りをしている。

もし手を触れ合わないことが賢い事なら、僕は馬鹿のままで良い。

もし愛を交わさないことがオトナなら、僕はコドモのままで良い。


「お前の人生を壊したくないんだ。」


ならどうしてこの手を振り払わないの?

雄二も僕と同じ思いなんじゃないの。



「分かれよ。」



分かりたくないよ。



「餓鬼かよ。」



餓鬼だよ。



「明久、お前には他の幸せがある筈なんだよ。

俺なんかには勿体ねぇ。」



幸せって何?

好きな人と傍に居ること以上の幸せが何処に在るの。



「そもそも、その好きが間違ってんだよ。」



雄二、怖がらないでよ。



「でも・・・。」



僕は傍に居るよ。



「その魔法が解けたら?

どちらかが先に気付いてしまったら?

残された人は、思いはどうすれば良いんだよ。」



いつか来るかもしれない未来を恐れたってしょうがないだろ。



「俺には無理だよ。

怯えながら暮らすのは耐えられない。」



二人なら、怖くないよ。

何度も話し合おう。

気づきそうになったら、魔法が解けてしまいそうになったら二人同時に解けよう。



「そんなの…」



来ないかもしれない未来に脅えて今の幸せを逃すなんて嫌だよ。

それこそ一番愚かなんじゃないかな。



だから、進もう。


繋いだ手が爛れてしまうほど暖かくて。

背景の赭が不気味なほど綺麗で。

紅く染まった彼の頬が、愛しくて堪らなくて。


小さく頷く雄二の頬に優しく口付けた。



僕の魔法は決して解けない。

分かっている。

決まっている。


君が誰かと話すだけで乾くこの心が渇くこの想いが、

君が誰かに笑い掛ける度に焼けるこの心臓が妬けるこの痛みが、


気の迷いな訳無いんだよ。


でも不安で仕方ない雄二の気持ちさえ愛しく思うから。


両の手でその躰を抱き締める。


君が安心して眠れるように。

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