めいん

□雨音
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雨は嫌いだ。

手に入れた最新機器に負担を与えるから。

雨は嫌いだ。

商品が使い物に成らなくなったら困るから。

雨は嫌いだ。

屋外のカメラの視界が悪くなるから。


朝から降り続ける雨を訝しく思う。

教室から見える景色も遮られて、不愉快なことこの上ない。

ただ、雨に濡れブラウスから肌か透けているのを見るのは一種の風物詩だとも思う。


一頻り雨が弱まるのを確認して俺は屋上へと歩みを進めた。

防水とは言え長時間の雨濡れは避けておきたいところ。

自分自身が濡れるのは気にせずカメラを死守する。


弱まったとは言え、屋上に設置された3つのカメラをと2つの盗聴器を回収するのに3分弱かかってしまい、

髪はおろか制服までずぶ濡れである。

水分を吸った制服は重い。

髪はまとわりついて不愉快。


だからこそ早く教室に戻りたかった。



教室に入り一番始めに目につくのは、太陽のような髪を持つ彼。

雨の日でも隠れない其は俺の世界を明るく照らしてくれる。

彼は例え夜に成ろうがその輝きを失わないのだろう。


「ムッツリーニ!どうしたの!?」

雄二と話していた明久が、俺に気づいて声をあげる。

それにつられ、雄二も俺の存在に気付く。


「・・・・・・・・・・・何でもない」


こんな濡れ鼠で此処に居ることが急に恥ずかしくなって顔を背ける。

不意に空から降ってきた柔らかな感触。

それがタオルだと気付いたのは一拍後。

それと同時に触れる暖かい手の温もり。


「拭いとけ」


風邪ひくぞ。

そう頭の上から降る声。

雄二の薫りが広がる。

暖かい、太陽の薫り。


「・・・・・・・・・問題ない」

でもそれにただ溺れるのが癪で。

俺は少し強がってみる。


そんな俺にため息1つ吐いて雄二は問題ない訳無いだろうと乱暴に髪を拭き始めた。

それが何故か暖かく思えて。


こんな雨の日だったら、悪くないかもしれない。

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