めいん2

□明日、世界が終わるなら
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「ん?」

ポツリと溢した言葉を丁寧に拾うのは目の前の赤い瞳。
疑問符を頭に浮かべながらウチの顔を覗き込む。

「いや、何でもない」

そう答えれば納得するでもなく、また視線を窓の外へと移した。

珍しい組み合わせだと我ながらも思う。
クラスには既に他の人は居なくて、周りは静寂に満ちている。
青い空は少しづつ朱色に移ろい、宵闇への準備を進めている。
それなのに。
ウチ達は明日へと向かう準備もせずに。
唯、窓辺で時が過ぎるのを待っている。

ウチの待ち人は図書館へ。
坂本の待ち人は職員室へ。

どちらもいつもの事だけど、二人で教室に居るのは初めてかも。
澄んだ眼の優しい色に、思わず溜め息を吐く。

「人の顔見てため息吐くなよ」

「ご、ごめん」


刺々しいけど優しい声色で告げた坂本に焦りながら答えるウチ。

何事もなかったように視線を戻す、赤色の彼が笑いかける。


「明日、世界が終わるなら?」


あ、さっきの言葉。
聞こえてたんだ。
その上でまた話題に出すなんて。
本当に、性格悪いわね。

そう、眼で訴えるように睨み付ければ坂本は空を仰ぐ。


「茶化してる訳じゃねぇぞ。唯の個人的な好奇心だ」

「何よ、それ」


思わず吹き出したウチに、更に坂本は言葉を足す。


「最後の1日に、島田は何をするんだ?」


真っ直ぐに射抜かれた瞳を、思わず見詰め返す。
その眼差しに恥ずかしさなど忘れて、うっかりと口に出す。


「ウチは坂本に告白するわ」


そうして、世界の終わる時を静かに待つの。

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