めいん2

□傲慢な終焉
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雄二を玄関に見送ったのは、それから1時間後。
時計は既に7時30分を過ぎた頃。
13時間とちょっと後にはまた学校で会えるのに。
見送る心は凍てつく。

「じゃあ、また明日ね」

無理に笑顔を作る僕の心を、見透かして笑う。
その慈愛に満ちた微笑みも、本当は好きだよ。

その表情に焦燥しか感じていない時もあったけれど。
今は違う。
雄二が、優しさだけで僕に接しているんじゃないと知ったから。

「おう、今度は新しいゲーム用意しとけよ」

「僕の経済力なめるな!次こそは雄二の家だからな!!」

遠くなる後ろ姿に、投げかける暴言も可愛いもんだろう。
閉じた扉に、振り返った静けさ。
慣れた筈の一人暮らしの寂しさも、楽しさの後には身に染みる。
光に導かれるようにリビングに脚を進め、先程まで雄二がいたソファーを見る。
景色に馴染んだ赤が消えた途端、色味を失う世界。
味気ない、訳ではないんだけれど。
足りない、と思ってしまう。

ふと、フローリングに違和感を感じる。
先程まで広がっていた塵芥達が、綺麗に姿を消していて。
いつの間に片付けたの。
そう問うべき相手も今は居ないから。

取り敢えず、ご飯食べてお風呂に入って寝てしまおう。
目を覚ませば、学校に行ってまたいつもの様に雄二に会えるんだ。

そしていつもの低俗な考えを思い起こす。
楽しさのあとの静けさ。
仲の良い友達と別れたあとの、いつもの諦観。
この笑顔も、いつまでも僕だけに向けてくれるものではないんだ。
そんな、卑下にも似た感情が不要なものだとも知っていて。

明日。
僕以外の人に笑い掛けている雄二を想像する。
堪らなく醜い感情が広がる。
けれど。
雄二の唯一は僕しかいないんだって。
そんな戯言を信じてみる。
一緒に居たいと口にしたあの顔を。
僕はきっと一生忘れない。

少なくても。
僕以上に彼を愛して居る人は居ないと思うんだ。
霧島さんにも、負けやしない。

そんな、傲慢な思考を胸に。
僕は今日の終焉を迎える。

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