めいん2

□色欲と理性
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傍に居て欲しい。
そう願った時、雄二は何時だって傍に居てくれた。
僕の心の内を察知して、一緒に居てくれた。
そして頭を撫でながら、何処にも行かないと囁いて。
不安になる僕を慰めてくれるんだ。

でも、僕は。
そんな雄二の行動も、全て。
雄二が優しいからだと決め付けていた。
僕が望むから、傍に居てくれるんだと。

だからこそ。
その優しさに甘えたくなかったから。
僕は一度だってこの想いを聲にした事はなかった。

僕と一生一緒に居て欲しい。

そう願った想いだって、聲にせずとも雄二には伝わって居る。
思い込んでいたんだ。

だけれど、漸くそれは間違いだと気づいた。
一緒に居て欲しいと言った雄二の顔を見て。
その言葉を吐き出した雄二の歪んだ表情。
我が儘を言ってごめんと、眉を顰めた彼。
確かに二人共通の願いなのに。
結局僕は、自分の意思を告げぬまま。
相手に縋る行為だけを遂行している。

「明久、ありがとうな」

ありがとうを言いたいのは僕の方。
沢山の感謝を伝えたいのは僕の方。
それなのに、僕の語彙不足は加速する。

言葉では無い何かで、確実に想いの伝わる方法を探している。
けれど所詮僕は皆に言われる通り少し頭が悪いので。
本当に、少し他人より劣っているだけだけれど。

取り敢えず、抱きしめてみる。
この心臓の鼓動と共に、想いが伝わらないだろうか。
この熱が雄二の躰を包み、考えが届かないだろうか。

嗚呼、でもそれは所詮甘えだ。
伝える努力を忘れて、受信する力を相手に求める。
それでも、この熱量に溺れて居たくて、力を込める。

「雄二。僕は・・・」

雄二は拒否するでも拒絶するでもなく、ただ僕の熱を受け入れる。
下はコンクリートに程近い硬さなのに。
僕の体重を支えるのは大変だろう。
それなのに、雄二は文句も言わず僕の次の言葉を待つ。

「雄二を霧島さんに取られたくないんだ」

「・・・おう」

床から上がってくる冷気とこの熱が相まって丁度いい温度になる。
込めた力を緩めながら、雄二と向き合う。

「もっと言えば、他の誰にも渡したくない」

穢い僕の心。
狡い、この心も、雄二は笑い受け入れる。

「そのくらい知ってる」

そう告げた雄二の顔はどこか勝ち誇った、嬉しそうな表情。
いつもの、雄二の表情。

朝、出来なかった行為も今なら許されよう。

察したように目を閉じた雄二に、僕は軽く口づけをする。

物語でよくある、あの触れるだけの優しいキスを。


その接吻で目覚めたものは・・・


「・・・おい、明久どこ触ってやがる」

「やだなー、ただのスキンシップだよ」

「ふざけんな、こんな所で盛ってんじゃねぇえ!」

「逆に何処ならいいのさ?」

「少なくても、此処は便所だ」

「便所だろうとどこだろうと、僕の愛は止められない」

「愛があるなら理性を保て!!」


変態という名の紳士。

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