めいん2

□嫉妬を誘引
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その後、当然ながら何も起きなかった僕らは、
(と言うか何も起こさせてもらえなかった僕は)
霧島さんと鉢合わせる事もなく家に帰ってきた。

日の沈まった世界は、暗く。
赤く焼けた空は、均衡を打ち破り完全な夜へと向かう。
時間を見れば六時すぎ。
僕の家から雄二の家は遠くは無いにしろ、そろそろ帰らなくては。

明日から普通に学校が始まる。
何故週末が二日しかないのだと、ゆとり全開な問を投げかける相手もいない。
もう少し、もう少しとズルズル伸びる滞在時間。
ダラけるという選択肢一択を守り続ける二人。

「たりぃ・・・」

何が、という質問もいらない位簡単な感想。
残念ながら、その意見には激しく同意。
視線を雄二に向ければ、定位置と化したソファーに腰掛けている。
目の前に広がる昨日の侭放置されたお菓子や飲み物も、全て空。
ゲームを始めたらキリが無いから手はつけない。
それでも。
することが無くなっても尚、足は玄関へは向かない。

「あと一晩泊まっていきなよ」

半ば本気で告げた言葉を、鼻で笑う雄二。

「んな事したら、翔子に殺されんぞ」

俺が、じゃくてお前が。
最高の脅し文句に、僕は少し気が引ける。

だけれど雄二は本当に性格が悪い。
このタイミングで霧島さんとか。
余計に雄二を家に帰したくなくなるじゃないか。

「僕も、姫路さんとか美波に何か言われそうだしねー」

少しでも雄二に対抗しようと。
僕に好意を寄せてくれている女の子は居ないけれど。
適当にいつものメンバーの名前を出してみる。

目を細めた雄二が、馬鹿にして表情を変えたのか。
それとも僕の思惑通りになったのかわからない。
取り敢えず口を開いた雄二の聲に聞き入る。

「明日は久々に翔子と帰ろうか」

独り言に程近い言葉をわざと僕に聞こえるように呟いた。
神経を逆なでする様な発言に僕はさらに言葉を重ねる。

「そういえば、美波が僕と映画に行きたいって言ってたな」

それが例え奢らせる為だったとしても。
一応女の子からのお誘いだし。
眉を顰めた雄二がさらに続けた。

「また翔子と如月グランドパークでも行こう」

僕とは一回も行ったことないのに!?

「姫路さんと、思い出の小学校巡りしようかな」

なんだよ思い出の小学校巡りって。
何の思い出だよ。
意味わかんないし。
そう自分自身に突っ込みながら雄二を見る。

顔を歪めている雄二が、少し嬉しそうな顔をしたのを僕は見逃さなかった。

「妬いてんのか?」

「妬いてるの?」

ほぼ同時に出た問いかけに、顔を見合わせる。
そして、そのくだらなさに二人で吹き出す。

雄二も、わざと霧島さんの名前出してたんだ。
僕に嫉妬させようとしていたとか、すごい可愛い。

自分のやったことは棚に上げて、にやける顔を制御できない。

嫉妬を誘引、成功っちゃ成功なのかな。

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