めいん2

□強欲は必然
1ページ/1ページ



「今日は何をしようか?」


11時台の遅すぎる朝食を食べ、ソファーに沈んだ雄二に僕は尋ねる。

昨日はゲームしかしなかったし、折角の休み、唯ゴロゴロしてるだけじゃ物足りない。

眠そうに、雄二は僕を見た。

昨日、無理して起きているからそうなるんだ、と同じ睡眠時間でもスッキリしている僕は胸を張る。


「てめぇが人にひっついて寝てっから暑苦しくて何度も起きちまったんだよ。」


なんて人の心を読みながら宣う雄二。

恐ろしい奴だ、おちおち心の中で悪口も言えないじゃないか。


「でも、僕を除けなかったってことは、雄二も満更じゃなかったんでしょ?」


勝ち誇った顔で言う僕に、雄二は顔を歪める。

覗きこめば、耳まで真っ赤に染め上げている。

…あれ、冗談で言ったつもりだったんだけど。

図星だったみたいだ。

しかし、髪と眼に足して、顔まで赤いとタコみたい。

なんという不細工。


「うっせぇ、黙れ」


そんなブサイクが可愛いなんて思ってしまう自分も相当重症のようだ。

ころころ変わる表情が面白くてたまらない。

ずっと見ていたい。

色んな雄二の感情に触れていたい。


「なんか外出たく無くなってきた」


外は暑いし、歩くのも面倒だし。

何よりも、外に出たらこの位置を保てない。

引きこもり駄目人間も同様に呟いた僕に、雄二が答える。


「取り合えず、離れろ」


雄二の台詞で、僕がさっきの顔を覗いている状態から動いて居ない事実に気づく。

確かに近い。

指摘どおりに顔を離し、ソファーの隣の席を陣取る。



「ずっとこのまま雄二が家に居れば良いのに」


ぽそり、と零した本音。

それは無理な事だとわかってはいる。

だけど、本当はずっと雄二の隣に居座りたい。


雄二は少しだけ寂しそうな顔をした。

違う、僕は雄二にこんな顔をさせたいんじゃない。

僕は無理して笑ってみせる。


「そーしたら、雄二をこき使って僕は優雅に生活して見せるのにさー」



誤魔化して、茶化す僕はきっと誰よりも臆病だ。


暖かいモノが頭の上に乗せられる。

ガシガシ、と乱暴に僕の髪を掻き乱して雄二は笑う。


「お前が望むなら、いつでも傍に居てやるよ」


そんなこと、不可能だと知っているのに雄二は嘯く。


雄二は僕の機嫌を治す事が得意だ。

そして、雄二はどこまでも優しい。

雄二が甘やかすから、僕はどんどん我侭になるよ。

雄二の全てを欲しがってしまうよ。


その感情から目を逸らすように、立ち上がる。


「だったら、ちゃっちゃと外についてきてよ」


家に居たいと言ったのは誰だ、と雄二は眉を顰めるけれど反対はしない。

このまま家にいては、ダメな気がした。

このまま居たら、欲が溢れてしまう。


逃げるように、僕等は太陽の下へ肌を晒す。


だって、本当に君が愛おしいから、強欲は必然。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ