学校の日常30
□自転車登校の特権
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「政宗、旦那が来たよ!」
慶次に言われて仕上げていた、『それ』から視線をあげると、竹刀を背負った恋人がいた。
んじゃ、馬に蹴られないうちに退散するよ、と慶次は帰っていって二人きり。
「お疲れ。…よし!」
「おぉ、さすがでござるな」
彼が釘付けになっているのは、自分が作った小さなワンホールにケーキ。
今にも食べてしまいそうな彼に待ったをかけ、準備していたケーキ箱にしまう。
「待たせたな、darling?」
「いえいえ。それでは参りましょう」
二人が向かったのは自転車小屋。
彼が自転車に跨がったあと、その背中に抱きつき自分も乗る。
彼はふらつくことなく静かに走り始めた。
夕焼けの中を走る二人乗り自転車。
帰宅後の甘いケーキにそれよりもっと甘い顔をするだろう彼を思い、回した腕に力を込めた。
こんなに彼のことを思えること
自転車登校の特権
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