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□女王の五玉
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三人の腹の虫も諦めるくらい空腹になった頃、いきなり目の前に黄・緑・青・紫、四色の光が現れた。
反射的に目を閉じるも、光は目を刺す。
しばらくしてその感覚が消えたのでゆっくりとそこを伺うと、見慣れた人たちがそこに倒れていた。

「姉さん!コレット!!」
「チェスターとパティも!?」
「キールとメルディもいるヨ!」

慌てて駆け寄ったが皆、すぐに目を覚ましたので安堵した。
目を覚ました六人はお互い顔を見合わせた。訳がわからないといった顔だ。
そんなとき、コレットが何かを落とした。

「コレット、それは?」
「先生、これね、教会の彫刻から落ちちゃったの」

彼女の手に戻ったそれは金冠だ。
翠玉が着いているのを見て、ジーニアスはもしかして、と姉を見た。

「姉さん、もしかして黄玉の何か持ってない?」
「え?えぇ、有るわよ」

そう言ってリフィルが取り出したのは柄の端に黄玉がはめられた短剣。
やっぱりと呟いてジーニアスはマオにあの指輪を出すように言った。

「ボクたち、古城でこれを見つけてさ、気付いたらここにいたんだ」
「ジーニアス!あなた古城で遊んでいたの!?」
「ボクは二人を止めたんだよ!」

鬼の形相になった姉を必死に止める。

「そ、それより!!チェスターは紫のなんかある?あとパティは青の」

聞いてみると二人は懐を漁り、それらを取り出した。

「リッドと狩りしてたんだが、獲物がこれ持っててよ」
「海賊からの戦利品じゃ!」

チェスターが取り出したのは紫玉の装飾がされた腕輪。パティはあの首飾りを取り出した。

九人がお互い持ち込んだものを皆が眺める中、セイジ姉弟は考え込んでしまった。

「紅、黄、翠、蒼、紫……」
「五つの、宝玉……」

ハッと顔を上げて二人は声を揃えた。

「「女王の五玉!!」」

すると、二人の声に反応したかのように宝物たちが、いや、宝物の宝玉たちが光出した。

「うぉ!!」
「キャッ!」

同時に聞き覚えのない声が響く。
『ああ、ああ、わたくしの宝たち……あの人がわたくしに贈ってくださったわたくしの……』

儚げな声が聞こえなくなると同時に光も消え去った。
それを目の当たりにしてキールは額に汗を浮かばせる。

「リフィル、『女王の五玉』は本当に存在したんだな」
「そのようね。私も驚いたわ……」
「なあ、その『女王の五玉』って何なんだ?」

質問したのはルークだ。

「そのままの意味よ。ただ、女王と言っても、このアトリシオン創成期の、だけれど」
「じゃあさっきの声は……」

若干青ざめたチェスターが呟く。

「女王の声、だろうね」
「悲しそうだたヨゥ」
「当然さ。夫の王さまから貰った五玉が盗まれちゃったんだから。その後、五玉が見つかる前に女王は死んじゃったんだ」

ジーニアスとメルディの言葉にパティは少し眉を下げた。

「想い出《たから》を盗まれ、死んでも死にきれなかったのじゃな……」

自分も、死にきれなかっただろう。あの“記憶”を思い出さないままだったならば。たとえ、それが望んだような記憶でなかったとしても。
ならば、女王のためにすべきは一つ。

「みんな!!……」
「「「え!?」」」



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