企画小説

□Beautiful was cursed by herselfe.
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暗くなる視界。遠くなる音。最後に届いたのは乳母の自分の名を叫ぶ声。

「ルーク様!!」

――大丈夫だ。俺は第一王位継承者だぜ?







目覚めると、いつものベッドで。目の前には心配そうな乳母の顔が広がっていて、その肥えた大地の色をした瞳をぼーっと眺めていた。
だんだんと何故自分が寝ているのか、彼女がそんな顔をしているのか思い出してくる。

――ああ、そうか。自分は倒れたのか。

「ルーク様…」
「大丈夫。でも俺なんで?」
「貧血をおこしたのです」
「貧血?」

血を流した覚えも無理な生活をした覚えもなく、貧血で倒れたという実感がない。
考えていることが表に出ていたのか、乳母は悲しげな顔をした。彼女の手がルークの両手を握った。ルークは頭だけ動かし、彼女を見た。

「ルーク様、私はお隠ししておりましたことがございます」
「隠していた、こと?」
「はい…。貴方は、貴方は女児でございます」

乳母の言っていることが理解できず、ルークは一瞬息するのさえ忘れてしまった。

「俺が、女?」
「はい…。これは公爵と奥様の計らいでございます」
「父上と母上の…」

曰く、皇族には言い伝えで、性の違う双子が産まれた際、女児は災いをもたらすものとされ殺されてきたのだという。
そのため、ルークの母、シュザンヌ夫人はルークをどうにか生かしたいと夫のクリムゾン公爵と我が子の性別詐称を決行。産婆たちには箝口令をしいた。
出来れば産まれた順も変えたかったらしいが、髪の色を除き見てしまったメイドがいたため断念。
そして今に至るという。

「と言うことは、俺の貧血は…」
「初経です。おめでとうございます」
「あ、ああ。でも、俺は」
「一般では祝うべきこと。言わせてくださいな」

そう言って彼女は笑った。
ルークも一緒になって笑っていたのだが、ふと気付いた。

「あれ?女ってことは、王位って継がなくていい…?」
「性別が公に出来ない今は難しいと思います」
「でも、アッシュが継ぐべきじゃないのか。本当の嫡男なんだし」

ナタリアとアッシュは愛し合っているわけだし。
これは近くにいる者であれば当然知っていること。
ナタリアは次期王の婚約者。アッシュは第二王位継承者だ。惜しくも手の届かない位置。アッシュの継承順が一つ。たった一つ上がるだけで結ばれる恋。
だが、ルークはその方法を知らなかった。

「(いや…一個だけ、出来る!)母上と父上は!?」
「こ、この事をお伝えすると、お二人で部屋に」

バッと立ち上がり、ルークは両親のもとへ走った。



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