novel
□消えるなら“フラン”のまま…
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「ベルせんぱーい。」
相変わらずのやる気の無い声で自分の名前を呼ぶフランに素っ気ない返事を返すのはフランの直属の先輩にあたるベルフェゴールだ。夕方からの任務に向けて自室でナイフを磨いていたらノックも無しに自分の部屋に後輩が入って来た。ノックくらいしろよ、なんてのは言うまでもない。何故ならベル自身、ノックされて素直に扉を開けるような優しさは持ち合わせていないからだ。
「何、カエル。」
「だからミーはカエルじゃないって何回言えば分かるんですかー。」
「いや、だってカエル。」
マーモンと一緒、なんて笑いながらミーの頭に被っているカエルの帽子を指さされる。
「…もういいですー。」
ふてくされたように背を向けて部屋を出ていくフランに、ベルは首を傾げた。
「…何なんだよ。」
フランはベルの部屋をあとにし、次に向かうべく廊下を歩き出した。
「あ、隊長ー。」
廊下を進んでいると前方からヴァリアーの作戦隊長・スペルビ・スクアーロが歩いてきた。それを視認したフランは無邪気な子供のようにぱたぱたとスクアーロに駆け寄った。
「何だぁ、フランじゃねーか。何かあったのかぁ。」
スクアーロは幹部に持っていくのだろう。任務の資料を片手にフランに問うてきた。
「いえー。別に何でもありませんー。ただー…。」
「ただ?」
「…いや、アホのロン毛隊長からかうと面白いなーって。」
スクアーロの言葉にしまった、と思い、咄嗟にいつもの毒舌を振り撒いて誤魔化す。
「んだとぉ!んなことしてる暇があんなら任務入れるぞぉ!!」
単純な隊長はあっさりと誤魔化され、フランが隠れて安堵したことにも気がつかなかったようで、説教が始まった。
「ったく、マーモンでもそこまで酷くなかったのによぉ。」
「あーはいはい。ガミガミうるさいんですよー。ミーもガキじゃないんですから分かりましたってー。」
「口答えしてんじゃねぇ!」
いまだ繰り広げられる説教の波から逃れるように、隙を見計らって編み出した自分の幻覚を置いていく。いくら幻術に疎いとはいえ騙されている、ということに少しは気づけないものなのか。それでよく独立暗殺部隊ヴァリアーの作戦隊長が務まるな、と呆れてしまう。
「はぁー…次はどこに行きましょうかー。」
フランのイタズラの真意は…