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□今日も僕らは
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「おい新八ー、酢昆布買ってこいヨー」
そう言うのはさっきから食べ続けていたせいで最後の一枚となった酢昆布片手にソファに座る神楽。
「いきなり何ですか…。ていうか何で僕が買ってこなきゃ…」
それを呆れたような口調で返すのは今しがた洗濯物を取り込んできた新八だ。
「あーじゃあ俺も。何か甘いもんよろしく」
「いや僕行くなんて言ってませんからね!何で銀さんまでパシってくるんですか!」
同じくソファに座ってテレビを観ている銀時に若干腹を立てた新八が言い放つ。
「いいから行ってこいアルー」
「そうだぞ新八。お前は行くべきだ」
「いやいや行くべきって何!行って僕に何の得があんですか!何でソファでごろごろしてる人達のパシりにされなきゃ…」
そこまで言って、新八は言葉を失った。というより言葉を紡ぐ気が失せたのだ。新八の目の前でしっしっと手を動かしてみせる銀時と神楽の顔に何を言っても無駄だと、諦めたように新八は買い出しに出た。
店で言われたように神楽の大好きな酢昆布と凄まじく甘党の銀時には甘いものをたんまり買って家路につく。
万事屋に着くと部屋の電気が消えていることに気づいた。まさかあの二人、僕にパシらせといて出掛けたのか、と半ば苛立ちながら半ば呆れながら玄関を開けた。
「ハッピーバースデイ!!」
足を踏み入れた瞬間につけられた電気の下、パンパンと弾けるクラッカー音に驚いている目を丸くしている新八の前では満足そうに笑う銀時と神楽が立っていた。
「……え?」
状況が一人理解できていない新八はキョロキョロと視線をさまよわせていると、天井に掛けられた「ハッピーバースディ新八!」の文字の入った段ボール製の看板を見つけゆっくり状況を飲み込んでいくと無意識に頬が緩んだ。
「驚いたアルか?新八驚いたアルか?」
にこにこと期待を含んだ表情で問いかけてくる神楽にうん、と柔らかく笑む。
「やったアル!銀ちゃん、作戦大成功アルネ!」
「あぁ。俺も新八の間抜け面見れたしな」
「…着目点ずれてません?」
さりげなくツッコミながら微笑んだ新八はこれでこそ万事屋だと感じていた。
無気力で端から見たらただの不真面目人間の集まりと捉えられがちだが、内に入れた者が危機晒されれば体を張り、命を懸け、守り抜き、計り知れない程の優しさで包み込む。
僕らはもう家族なんだ。
そう感じるのは今日も変わらず。