☆DORACO★DREAM☆
□真実の、(甘)
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マルフォイは走っていた。
クラッブとゴイルを置いてきて、パンジーのことなんか考えず、ただひたすら走っていた。
次の授業はなんだろうか、それも考えずに。
今何時だろうか、それも考えずに。
目標は分かっていた。
向かう先も、分かっていた…。
マルフォイが走ってゆくその先で、目標の人物を見つけた。
「……キノ……」
彼女のそばまでやってきて、名前を呼ぶ。キノは振り返り、少し驚いたようだ。
『マルフォイ…どうしたの?』
「来い」
『えっ?あ、ちょ』
返事を聞くまでもなく、マルフォイはキノの腕を掴み歩き出す。
周りの生徒の目なんておかまいなしだ。
キノは少々もつれながらもついてくる。
マルフォイはキノを人の居ない廊下へと誘った。
『、マルフォイ、』
そこでようやくキノを離した。
キノはいつもと違うマルフォイに気づいたようだ。おそるおそる見つめてくる。
『なに………どうしたの?』
マルフォイはまっすぐキノと向き合った。
「お前が好きだ」
『ぇっ』
突然の告白に、キノはかたまる。
まさか、そんな言葉を聞くとは思っていなかったのだ。こんな晴れた午後の日に。さっきまでハリーと話してたのに。いま、魔法薬の授業に行こうとしていたのに。
驚いて何もしゃべれないでいるけれど、マルフォイはじっと目をそらさずに見つめてくる。
「キノが好きだ」
あまりにも真剣な表情に、キノはとまどった。
こんなマルフォイ、見た事がない。
ずい、とマルフォイは近づいてくる。
反射的にキノは後ろに下がる。
『そ、そんな嘘』
「嘘じゃない、キノが好きだ」
『い、今までそんなこと』
「ずっと好きだった」
『だ、だってマルフォイ、ボクの事を迷惑だとか、け、穢れた血とか言ったじゃない!?』
「そんなの嘘だ。君が好きだ」
キノは倒れるんじゃないか、と思っていた。
だって、マルフォイとはいつも犬猿の仲で、それはハリーに並ぶほどで、よくマルフォイと喧嘩してきた。
絶対、マルフォイはボクのこと嫌いだと思ってた。そして、ボクも………嫌いのはずなんだけど、
『だって、君はスリザリンじゃないの!』
「だから?」
『ボクはグリフィンドールだもん』
「関係ない」
『それに、ボクは純血じゃない…。君はグリフィンドールと、純血以外の人が嫌いじゃないか』
そこまで言って、マルフォイを見てみるけれど、相変わらず絡み付くような視線で見つめてくる。
そうして、急に手首を掴まれた。
『や、ちょっと』
「わからないんだ」
『え?』
マルフォイが、キノの手首を掴んだまま喋りだす。
「僕だって分からないんだ。君はマグル生まれ、確かに僕の嫌いな種族…それでいてグリフィンドール、僕の嫌いな、大っ嫌いな人間…」
『………じゃあ、』
「でも、キノは好きだ」
『っ……』
「どうか、してるな……僕も…でも、これだけはどうにもできない。制御できない。君が混血だろうとなんだろうとかまわない……好きなんだ、君が……キノが好きだ」
今キノの顔は真っ赤だろう、こんな熱烈な告白はされたことがないから。
掴まれた手首が熱い。
マルフォイが手を離してくれない。それどころか、力が増してくる。
こんなマルフォイ、知らない、しらない…。
離れようとするたびに距離がちぢまってく。
とにかく、この状況をどうにかしたい。
マルフォイが近すぎて、頭がおかしくなりそうだ…
「キノは、僕の事好きか?」
『……っえ?』
「僕の事、どう思ってる…?」
やめてよ、そんな真剣な顔…
『どうって、いつも嫌味ばっかり言ってきて…っ、嫌な奴だと思ってたのにっ』
「……ごめん」
『!? な、何あやまって…!?』
「だけど、君が好きだ」
『!…っ、ボク、は……だけど、……そんな……』
マルフォイが見れない。
心臓がやばい。
顔が熱い。
『そんな…こと言われたら………っ、ボク、
ま、マルフォイのこと…好きかも、って、思っちゃうじゃん……!!』
「本当に…」
その瞬間、もう片方の手首も掴まれた、と思ったら、半ば強引に唇をふさがれた。
『ーーーーーーーーっ!!!!』
驚きに目が見開く。
「好きだ…キノ」
ぎゅ、と抱きしめられた。
キノはもうぐったりしている体を、マルフォイに預けた。
マルフォイのぬくもりが伝わってくる。
すごく心地よく感じられた。
「……ほら、言ったでしょ」
「おっどろきぃー…効いたね、真実薬」
「マルフォイの気持ちなんて最初から気づいてたわ、わたし。なのに正直にならないから…キノも可哀想だし。こっそりマルフォイのカボチャジュースに仕込んだの」
「くそ、なんでマルフォイなんか…!?いつまで抱き合ってるんだ、このーーっ!」
「「駄目、ハリー、ストップ」」
真実の、気持ちはとても小さくて大きく、照れ屋さんなのです。
END