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□わかりきった答えでも
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赤黒♀
 
 
 
僕は今、物凄く悩んでいます。
 
因みに現在は国語の授業中。得意な教科に分類される時間ではあるが、今は正直全く身が入らない。
どうせ集中出来ないなら受けないほうがマシだと割り切って、ノートにも教科書にも一切目をくれずさっきから空を眺めては幸せのかけらをこぼしていた。
「………………………はぁ」
もう何度目かわからないため息をつくと、今自分の頭の中にあることを整理してみようと思い立った。
僕には好きな人がいる。
彼は僕がマネージャーを受け持っている男子バスケ部の部長。
赤司征十郎くん。
簡単に彼を表すとすれば、彼はなんでも出来る、だろう。
「一通りこなせる」とかいうレベルではない。全てにおいてNO.1なのだ。
そして、僕はなにを血迷ったのか、そんな厄介な彼が好きになってしまったのだ。
…本当、なにを血迷ったんでしょう。
彼は明らかに僕の気持ちに気づいておいて、それを逆手にからかってくるんです。
それで、よく恥ずかしいことになるんですが…(遠い目)。
今日、告白しようと思います。
未来が無い恋に身を浸すのも悪くは無いと思うんですが、生憎僕はこの状態で我慢していられるほど強くはありません。
変に期待するくらいなら振られるほうがマシ…のような気がする。
既に放課後部活前に話があると言っておいた。
あとは本番演習だけです。
そりゃ、相手があの赤司征十郎さまっていう時点じゃ玉砕覚悟ですけどね。
 
 
「…なにを言ってるのだよおまえは」
「?なにって告白の相談ですけど」
「………………………黒子。おまえもしや鈍感…………だったなわるい」
「はぁ?ちょっ…緑間くんっ!?バックレは駄目ですっ!」
「……………………………」
彼女の真剣な声音に負けたのか気迫に負けたのか。
背を180°回転させ去って行こうとした緑間の背中を必死で呼び止めればふ、と足が止まった。
「………黒子、それ、本気なのか?」
「本気です。だからどうすればいいのか教えてください。告白」
「知らないのだよっ!そういうことは黄瀬に聞くべきなのだよ」
「うーん…黄瀬くんはすこし頼りになりませんもん…」
「…………まぁ、アイツの場合は…」
何といってもアイツは重度の黒子厨だからな。
緑間がため息と共に吐いた言葉に見覚えがあるのか黒子はひとつ、身震いをした。
「そもそも、黒子は本気で赤司に告白するつもりなのか?」
「はい。そのつもりで既に呼び出しもしましたし」
「……………いろいろとご苦労なのだよ」
「まぁ、赤司くんのことですし、呼び出した時点で気づいている可能性もありますが」
「……………………………」
というか、完全に気づいているのだよ。奴は。
そして心の中で踊っているのだろうな。
その様子を容易く想像出来てしまった緑間は一息つくと、ポンポン、と水色のまあるい頭に手を置いた。
「奴には好きという二文字を言うだけで通じるだろう」
「わかりました…!シンプル イズ ベストですね!」
「…まあ、頑張るのだよ」
「ありがとうございます…!」
…どう転んでも答えはYESであることに変わりは無い。
だったら赤司の「照れるテツナも可愛い」思考を邪魔してやるべく一言に纏めてやるというものだ。それくらいの嫌がらせは許してくれるだろう?
「…ったく、黒子も厄介な奴に惚れたものだ」
呟いたそれは、誰にも聞かれることなく空気中へと溶け込んで行った。
 
時は放課後。
どう考えたって考えなくったって、この状況をつくりだしたのは紛れも無く僕である。
「…テツナ、話って何だい?」
「…あー、と…ですね…」
昼間はあんなにも意気込んでいたというのに、いざ本人を前にすると思考がまったく正常機能しない。
それでは駄目だ、今日はこれから部活があるー…
部活に遅れるわけにはいかないし遅れさせるわけにもいかない。
さあ一息に…………
「赤司くん、あのっ…………「…本当、可愛いなテツナは」………は?」
精一杯の告白を相手によって遮られてしまったのですが…え、なんですかこれ失恋フラグですか。
…まだ思いを告げてもいないのに。
「違うよテツナ」
「へ…………………」
「告白は、僕がやると決めていたからね」
「………………………?」
すっかりペースに巻き込まれてただただ首を傾げるばかりの彼女を赤司が一瞥する。
……刹那、彼女は彼の腕の中にすっぽり、収まってしまっていた。
「…え、あ、ちょっ…………赤司、くんっ………!?」
「ああもう、可愛いなテツナは」
「赤司くんっ…!?冗談はやめて…!」
「好きだ。愛してるよテツナ」
「だから…っ」
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