short

□365日バレンタインの男
1ページ/1ページ

pppp…
突然の騒音に重い瞼を持ち上げると、ソレは耳元の携帯が原因だったと判明した。
アラームを止める動作でそのまま時間を確認する。
起床は6:30。
昨夜は部活帰りの仕事で遅くなり、必然的に寝るのが深夜だった為眠気が次から次へと襲って来る。
(あー…、……眠い…)
シャキッとしない頭を軽く叩いて着替えを済ませれば、下から朝食を知らせる声が聞えてきた。
 
登校7:36。
登校途中に女の子に握手を求められるのもサインを書けとせがまれるのも至っていつもどおりだ。
そうして門を潜り―――
「…あり?あれは…」
丁度校舎に入ろうとしている水色の髪を発見。
だだだーっと全速力で走ってその肩を叩けば、振り返ったのはやっぱり予想通りの彼だった。
「おはよっス!黒子っち」
「…あ、黄瀬くん。おはようございます」
柔らかくふわりと笑んだその表情はどのモデルよりも綺麗だと思う。
あー、朝から会えるなんてめっちゃラッキー。
生きてて良かったっス…!!
「…朝から疾走なんて…元気ですね」
「だって黒子っちが見えたから…!!」
「…」
そうですか、と一瞬の沈黙の後顔を背けた黒子っち。
――あれ?オレなんか悪いこと言った!?
(黒子っち、怒ると怖いんスよね…!!)
焦ってその背けられた顔を覗き込んだら――…
「…え?黒子っち…?」
その頬は朱色に染め上がっていた…。
「??黒子っちー?どうしたんスか?熱でもある??」
「ないですよ…ばか」
??
なぜか心配をしたのに罵言を吐かれるという行動をされちょっと傷つくがまぁいいや。
朝から黒子っちに会えたんだからそれくらい気にしない!!
生まれつき持ち合わせているポジティブ精神を発揮しながらにこにこと下駄箱を開ける。
今日は保体あったっけ?あるけど黄瀬くんの嫌いな数学もありますよ。げぇー。
そんな会話を好きな子と交わしながら靴を取り出そうと試みたら、実際は手にあたる筈のものが無い。
…否、あるにはあるのだがその上に何かが置いてある、…のだ。
「…黄瀬くん?どうかしました…か…?」
「えー、と」
「…あ。女の子から、ですか…」
「…うん。そーみたいっスね」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…モテモテですね」
「そんなんじゃないっスよぉぉ!!」
手にあるのは、可愛らしくラッピングされたカップケーキ。
それを見て一気に機嫌が急降下する黒子っち。
え!?オレは悪くないっスよね!?
すたすた、と先に歩く彼の華奢な背中を急いで追いかける。
すぐに並んで名前を呼んだら、オレのほうを一回見て、それから拗ねるようにそっぽ向いてしまった。
…なんだって言うんスか…!!
理由はわからないけどもしかして嫌われたのか、と多大なダメージを受けて呆然とその場に立ち尽くすと、ひょこん、と止まった彼はくるりと振り向いた。
「??」
「黄瀬くんは、365日バレンタインですね」
ごめんなさい。
何かわかんないけど謝るからその黒い笑みはやめてください怖いです。
7:45。丁度通りかかった青峰が呆れてため息をついていた。
 
【365日バレンタインの男】
 
(どうして黄瀬くんを見ると胸が苦しいんだろう…)
 
 
 
 
*黒子は黄瀬が好きだということを自覚してなくてでもやきもち焼いちゃう。黄瀬は黒子の鈍感さに悩んでて、だけど黒子の不機嫌がやきもちだとはわからなくて嫌われたの!?とショック受けるヘタレ。みたいなイメージです。黒子初小説!!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ