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□最後の恋がおわるとき
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「そういえば、オマエとはじめて会ったのってここだったネ」

「あ?…そうだっけ?」

とぼけたのは負け惜しみだ。
テメェにとってはそういえばでも、俺にとっては忘れることのなかった事実である。

「楽しかったナ」

隣に座って空を見上げて。
桜の花が良く似合う。
端正に作られた顔のパーツと、白い肌。
まるで、遠くに行ってしまうように儚い外見に比べて中身はてんで図太い。

今、隣で俺がどれくらい緊張しているかなんて気付く術もないのだろう。
鈍感で、鋭い。

すべてにおいて理解してもらおうなんて考えていない。
けど、コイツは俺をある程度知っている。

理解者には心を許しやすいのは、この世の摂理だ。

そしてきっと俺にはコイツ以上の理解者が現れないだろうことも気づいている。

その白い肌を桜色に染めてやりたいし、隅から隅まで食べてしまいたい。

そのまるっこい頭を撫でてやりたいし、
尖った唇にキスしたい。
手を繋いでみたいし、
デートもしてみたい。

可愛いって、素直に伝えてみたいし
好きだよ、って言いたい。

服を脱がせて
恥ずかしがるアイツの顔を見てみたいし、
愛してるって言って欲しい。

愛されるより愛したい。
でも、相思相愛がいい。

ただ、告白して振られるのが怖いのだ。
そしたらどうなる?

避けられて、顔も見なくなるだろう。


耐えられない。


春の匂いに混じってチャイナの香りがほんのりと舞う。
ん?と思った時は遅かった。


目の前にまんまるの目があった。
空色。

長いまつげが風に靡く。

「ここで、一年前オマエと出会ってなかったら、今よりずっとつまんなかっただろうナ!」

キスできるくらい顔が近い。
驚くことしかできなかった。

「━━━━━━━━好き」

チャイナが頬を染めた。

目を疑う。


スキ?



好きって、なにが。






「私、オマエのこと、好きヨ」

「は?」




オマエはヘタレチワワアル。

チャイナが楽しそうに笑った。
顔が離れる。

「オマエが私を好きだなんてずっと前からお見通しネ」







イタズラが成功したように桜の花びらを俺の髪から取り払ったその真っ白な小さい手を引いて





力いっぱいに抱きしめた。
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