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□最後の恋がおわるとき
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風に乗って桜の花びらが舞う。
水平線が澄んで見える。
視界一面が白と赤を足して2で割った色に染まった。
隙間から、青空が見える。





最後の恋がおわるとき










桜を見ると思い出す娘がいる。
すっかり腐れ縁だと思っていたが、よく考えてみるとアイツと知り合ってから季節はまだ一巡りしかしていないことに気づいた。
ここは、真選組が毎年花見をする広場の木の下である。
晴れた空と暖かい空気に誘われて、一年ぶりに足を運んでは満開の桜を頭上に寝転がってみた。

(まだ、一年か)

自覚はしていた。
初恋である。

あの馬鹿でいきなり現れた異星人に恋をした。

勝算は無い。
アイツはきっと、まだ恋というものを知っていない。

じゃあ、どうすれば━━━━━━━━

ひらり。ひらり。
顔一面に降ってくる桜を眠気半分に眺める。

ふと、土草を踏む音が聞こえた。


「わあっ!綺麗な桜でいっぱいネ!」


(え、チャイナ?)

まじでか。

まさか会えると思ってなかったから心が弾む。
自分でも情けないが、すっかりあの年下の小娘に骨抜きにされているのだ。

紫の番傘片手に意中の相手は現れた。

桜ばかりを見ていて、アホのように口を開けている。
かわいい。
…和む。

桜の花びらをその朱色の髪の毛に絡ませながらぼう、と頭上を眺めているそいつは、もともとの顔立ちの良さも相まって絵になる。

すぐ近くにいるのに俺に気づかないのをいいことにこちらもそのアホヅラを眺めてみる。

…あ、今日のスリット、いつもより深め。

パンツ見えねェかな。
やっぱアイツとなると、かぼちゃパンツとかかねィ。
俺の趣味的には透けてるやつとかでも…。
でも子供パンツだったら如何にも男知りませんってかんじで萌えるな…。
つーかなんでもいいや。
どんなパンツだってどうせ脱がすし。
さて、どうやって脱がそうかなァ…

「げっ、なんでオマエがここに…っ!」

世界の終わりかというような絶望を携えた表情が俺を射抜いた。
さっきまであんなに幸せそうだったのにこの変わりよう。
俺の力すげェ。

「なんでって、花見に決まってんだろ雌豚が」

相変わらず素直になれない俺の言葉は辛辣だ。
恋心なんて少しも滲ませない。

それがこの娘と距離感を保ち続ける原因だということは充分理解している。

でもこちらは芋侍だ。
女を口説く手段なんて知らないし、実行できる気もしねェ。

街にあふれるカップル全てを尊敬しよう。
俺はこうして憎まれ口を叩くだけで精一杯である。

「あれ、オマエ」

チャイナが俺の隣に座った。
え、なんで。
心臓がざわめきたつ。
血液の巡りが良くなる。

動揺。

「ここで寝てたアルか?…頭にはなびら、ついてるヨ」

くふふ、とチャイナが笑った。
いつも遠くから見ていた、旦那への笑顔と同じくらい。

「な、なんで」

「いや、なんでって。風が強いからじゃないアルか?」

「いや、そうじゃなくって」

そうじゃなくて。

おまえ、俺に笑ったこと今までなかっただろ。


言葉にしたら、負けな気がした。
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