etc
□ロマンチックラブ・イデオロギー
1ページ/1ページ
※山崎がゲス。会話が下ネタ。キャラ崩壊注意
意外とコイツは聡明だ。
そんなことはとっくに気づいていたし、別に特記すべきことでもねェ。
つーかむしろどうでもいい。
そもそもどうでもいいを通り越して死ね殺す殺してやる土方のついでに。
「沖田さんってわりとアレですよね。愛情のベクトルがおかしいというか」
コイツ、とは窓際に立っては横目に窓の外を見ている奴のことである。3-Zの教室のしたにはちょうどプールがあるのだ。山崎があんぱんを貪りながら眼力でも女子の水着姿を貪っている。
決してこっちを見ないわりに口元はニヤついていた。
━━━━━━━━胸糞ワリィ。
「は?愛情も何も生憎俺にゃあ女どもを目で犯してる目の前のテメェをどうやっていたぶろうかって考えるくらいの脳しかねーよ」
そう言いつつ机の上に広げている積分を黙々と解いていく。俺はもとから理数系であって、頭を使うのは昔から向いてない。
「つーか山崎、おまえなに?体育サボってまで愛しのカラクリの覗きかィ」
「どうして水泳は、男女別なんですかね」
「知らねーよ銀時にでも抗議しに行けよ」
大体こんな炎天下で、土埃に塗れて野球をするとかいう体育教師に怒りが湧いてこないほうがオカシイ。
いつもなら教室でジャンプ読んだり、スマホでゲームしたりして時間を潰すが、今日はなんだか無心で何かしていたかった。ひたすらに。
山崎がサボりについてくるのは結構珍しくない。
「沖田さんって結構理屈っぽいですよね。理系のくせに」
「そうでもねーとやっていけねェときもあるんでさァ」
ふあ、と欠伸を噛み殺しながらまたひとつ積分を解く。入試レベルの応用って聞いてたけどわりと難しくなかった。
「さっきからそうやって積分してんのも、自制してるんでしょ?」
「何がでィ」
「チャイナさん。意外と着痩せするタイプですよ」
机の上に並んでいる教科書がずさーっと床に落ちた。山崎は腹を抱えて何かを堪えている。
「あんな外見ロリなのになー。何カップかなー。Dくらいあるかも」
「テメェ山崎のクセになんてモン見てやがる…!」
拾うのも億劫で机の上にへばりつく。
想像しただけで鼻血が出そうでわりと危うい。ちらりと山崎を見ると相変わらず視線は窓の外だ。
「ほらほら、今プールから上がりますよ。ちっちゃなお尻こっちに突き出して…かわいいカタチしてるし、水が滴っててなんか…エロイ」
コイツ、俺の内心を知っているうえでピンポイントにからかってきやがる。脳内に描き出したその想像図はまだ童貞の俺には刺激が強くて勃ちそうになる。
ここで勃ったら完璧に敗北したことになっちまう、と気力で抑えこんで頭の中のピンクな想像を消しさろうと再び、シャープペンシルを手にとった。
「━━━━━━━━あ、チャイナさんがそよ姫から胸揉まれてる。…顔赤くしちゃって、感じてんのかな、カワイイ」
「テメェ、いい加減ゲスすぎ…る…」
たまらなくなって山崎を殴ろうと立ち上がると自然と窓際に立つソイツの後ろにプールサイドが見えた。
スクール水着姿のチャイナが、泳ぐ順番を待つために並んでいた。
特に揉まれてなどいない。
「あっれー、もしかして想像しちゃってましたー?感じてるチャイナさん」
山崎が俺のチンコを見ながらニヤニヤしていた。
思いっきり山崎のチンコを蹴り潰す。うめき声をあげてひたすら深呼吸して震える山崎を一瞥して床に落ちた教科書やらを拾った。
なんとなく視線を感じて窓の外を見遣る。
視線の原因はチャイナだった。
『見てんじゃネーヨ、サボり魔』
口パクで暴言を吐きつつ、柔らかそうな膨らみを隠すように腕を組まれた。
俺の視線を気にしてやがる…。
なんとなく嬉しくて思わず口を手で塞ぐと、隣から山崎の冷めた雰囲気を感じた。
「沖田さんって意外と純情ですけど…」
また何か無駄なことを言おうとしている。
「チャイナさんのどこが好きなんですか?」
椅子と床が擦れる音が響く。
鈍い音をたてて、バランスを崩した椅子が後ろに倒れた。
「━━━━━━━━ちょっくらウンコ行ってくらァ」
山崎はひたすら、一連の動きを面白がってニヤニヤしていた。
*
ゾロゾロと体育から教室へ戻ってきたクラスメイトに混じって、トイレで三十分近く時間を潰した沖田も戻ってきた。
山崎が近づいていっておもしろそうに唇を沖田の耳に近づける。
「いっぱい出ました?」
ギロリ、と人を殺せそうな鋭さで山崎を睨んだ。
まわりの女子はキャーキャー言ってその様子を見ている。どうも山崎は確信犯で、こういうことをしてくる。
キスしてるみたーい、という甲高い悲鳴が耳を突き抜けたところで、視界の端にピンク色が見えた。
水に濡れておろされた髪。寒そうに体を震わせている。
山崎を押しのけて彼女と隣である自分の席に座る。出しっぱなしの数学の教科書なんかは手早く片付けた。
「寒そうだねィ」
「なにアルか覗き魔ヤロー。キモイアル」
「あんな体見る価値もなかったでさァ。…つーか震えてんじゃねェか、水に体温吸われたな」
心無しか唇も紫色の血色が悪い彼女を心配して自分の長袖ワイシャツをかけてやる。
途端首が折れるんじゃないのっていうくらい勢いつけて、顔を逸らされた。
「テメェ…。なんだその態度」
「そっちこそ何ヨ!気が狂ったのカ!」
もともと日光も透けて通すんじゃねーの、っていうくらい白い肌が、耳が、首が赤い。
…まさか、照れてる?天使か。
「神楽様のナイスバディ見ておっ勃ててたクセに何してるネ!!!」
「べっ…!!!!別に勃ってねーし!!!!!?」
「いーや、私と目合ったあとどうせトイレ篭ってシコシコしてたんダロ、気色ワルイネ!!」
そういいつつ顔を真っ赤にする神楽に思わず手を伸ばそうとして
そしてはたかれた。
そしてその犯人は、目の前の女に横から抱きついてきた。
「神楽ちゃんっ。まだどこも犯されてないですかっ」
「徳川テメェ…」
百合なのか友情なのかよくわからないどっかのお偉いさんの娘らしいボンボンが、俺の(将来の)嫁のあちこちを触り始める。
女という性別をいいことに、まだ俺も触ったことないようなところまで手を伸ばす。それを恥ずかしがるチャイナは可愛らしいし正直オカズにしたこと数知れずだが、しかしやはり女同士とはいえ許し難い。
しかもこの女の悪いところはわざと俺の前でやっているということだ。
「そよちゃんだめアルゥ…!恥ずかしいヨ…!」
徳川そよはニヤニヤと俺を眺めつつチャイナの体を触りまくる。
「わたしたちお友達じゃないですかっ。お友達っていうのは体の深いところまで知っておくものだって…」
声色だけはシュンとしているが存外楽しんでいるようにしか見えない。
「それはいいケド…サド、どっか行ってろヨ」
赤くなった頬に潤んだ目で睨み付けられて正直抜いたばっかのチンコが意思を持ちそうになっている。
勝ち誇ったような徳川そよが、舌を出してきた。
殺意を覚えて遠くを見ると、近藤さんたちに混じって話していたはずの山崎がニヤニヤとこっちを眺めていた。
━━━━━━━━気に食わねェ。
目の前の白くて細い手首を掴んだ。
教室がざわめく。
「ちょっ、サド!次すーがく…っ」
「山崎ィー。俺とコイツ、いまからウンコってセンセーに言っといて」
わかりましたー、と面倒そうなのを隠そうともしない返事が遠くから聞こえてくる。
チャイナの手を取った俺は、屋上までの階段を駆けあがった。
ウンコって何アルか乙女はそんなモンしないヨだのとぴーちくぱーちくうるさい女も、呼吸を乱すことなくぴったりついてきた。
鍵の壊れた扉を開けると、広がる青空。
日に弱いコイツに気を利かせて、タンクの影になっているところに腰を落ち着ける。
文句をいいつつもなんだかんだ隣に座ったチャイナの髪はまだ水に濡れていた。
「あーあ、数学サボりになっちゃうアル」
「仕方ねーから授業わかんなくなったら俺が直々に教えてやろうか」
「うるせーヨ誰のせいだと思ってんだこのチワワが」
神楽が唾を吐くように威嚇してきた。
このモテモテなオレ様と1時間サボれるというのにどこまでもそこらへんの女とは違うやつだ。
不意にさっきの顔を赤くして感じるコイツを思い出してしまってふるふると首を振る。それを心無しかジト目で見てくるチャイナが、チンコを蹴りあげてきた。
うめき声がコンクリートに響く。
「妄想してんじゃネーヨ童貞が」
そこには何の優しさもなかった。
襲ってないだけ感謝してほしいくらいなのに。
「頭ン中くらい、いいじゃねェか!!!」
「馬鹿言うなヨ、本人目の前にしてなにやってんのアホなの殺すヨ!??」
「じゃあ襲っていいのかよ!!!?」
「ブチ殺す!!!!」
飛び蹴りをしかけてきたソイツの細い足首を掴んだ。軽すぎて宙に浮いたソイツが、離せ離せと空いているもう片方の足で蹴りつけてくるから手を離すと、ドシャリ、とコンクリートに頭から落ちた。スカートの下は色気もなにもない芋ジャである。
「ひっ、酷いアル!!!普通優しくおろすデショ!!!オンナノコなのに!!!」
顔面を強打したらしいソイツが、額を手でおさえて立ち上がったのを見て、笑ってやった。
「こんなツルペタな女がどこにいるんでィ」
さっきの水着姿で意外とあることは知っていたけれど、思わず口をついた言葉にチャイナが怒りを示した。
「神楽様はDカップネ!!ナイスバディヨ!!!馬鹿じゃねーの!!」
「でぃ、でぃーかァ」
「顔赤らめんなヨキモイ!!」
山崎のやつ、目測当たってやがる。
思わず裸体のチャイナを想像しちまって殴られた。
いろいろ痛い。
「つーかさっき徳川に揉まれて感じてただろィ。…ふしだらな女」
Sのハートは打たれ弱いんだと目の前の好きな人から顔を逸らすとさっきの行為を攻めてやる。
あのやりとりは、俺の前限定で行われてる(ハズ)だからまだしも、あんなに教室で堂々とやっていたらいつかコイツをオカズにする野郎が出てきそうでこっちは気が気じゃないのに。
徳川の指の隙間から溢れるソレにしゃぶりつきたいと何度思ったことか。
「ふしだらって…そんなこと思ってたアルか」
「おーおー、男の前でハアハアしやがって、襲ってくれって言ってるようなモンじゃねーか。いつか襲われるぞ、山崎とかに」
アイツは俺をからかうためならやりかねない。いや、マジで。
「それはっ…!オマエの目が…!」
「は?俺がなに?」
「…エロイからだヨ!!!犯されてる気分になるネ!!」
「……は?」
「獣みたいにギラギラ光ってるネ!オマエノ目!!…いつか、食われちゃいそうアル」
無意識か体を手で隠したチャイナが、顔を赤くして睨みつけてくる。
「別にオンナノコ同士で胸揉むの普通ヨ、そよちゃん以外ともよくするモン」
「はあっ!??」
「じゃれ合いみたいなモンネ、別にいやらしいことじゃないアル」
「女って怖い」
「でも、」
顔を真っ赤に染めたチャイナが、俺が着せたワイシャツに顔を埋める。
「オマエに見られてるときだけヨ、気持ちよくなるのは…」
思わず、距離を開けた。
「お、俺に近づくな!!!!」
「……は?」
これ以上ないくらいの間抜けな顔をチャイナが俺に晒している。
いつもならすかさず馬鹿にするところだが、今日はそんな余裕はなかった。
「サ、サド…?何やってるアル…?」
「これ以上そばにいたら、チャイナのことぶち犯しちゃいそうっ!!!!!」
「はあっ!??馬鹿じゃねーの!????なんで離れるんダヨ!?????」
「まだはやいっ!!!!付き合ってもねーのにそんなことできねェ!!!!」
「どこまでチワワアルかオマエ!!!!空気読めヨ!!!!!どう考えても…っ!!!!!!」
顔をこれ以上ないくらい赤く染めているチャイナが、一歩近づいてきた。比例するように一歩後ずさる。
ため息が聞こえた。
「ほんっっっと、オマエってアレだナ。チェリーボーイ」
「テメェのためを思ってまだ襲わないでいてやってんのになんでィその態度」
「……」
絶対零度の視線が童貞を襲った。
おわり