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□距離=イヤホンの流さ
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帰りのバスに乗って揺られていると、いっつも隣に座ってくる先輩がいる。
おんなじ生徒会の先輩でポジションは会計。ちなみにミーは書記。
そしていつもお決まりのようにミーの右耳からイヤホンを抜き取っては当たり前のように自分の形良い右耳に入れて聞き始めるのだ。
今日も例外無く先輩はミーの隣にやって来て、一連の作業をしたあと、ん?と首を傾げた。
そして、何かイタズラっ子のような表情をしたかと思ったら急にニヤニヤし出した。
「しししっ。おまえカンワイーな!」
「…突然何ですかー?ベルセンパーイ」
「あ?だってコレ…この前王子が好きって言ったバンドだろ?」
「え。……あっ!…………げ、……いやっ、その…」
「ん?」
「違く、て……違わないです、けど…ほら、先輩って趣味いいから聞いてみようと思っただけ…!」
「ふーん?」
なんだー、ツマンネーとか言って先輩はミーから視線を逸らした。
失礼な。恋心を守る為に健気な女子高生、頑張ったというのに。
「…あれ、もしかしてイヤホン変えた?」
気づかれてしまった。
出来れば気づかれたくなかったのに…
「ああ、今までのが壊れちゃったんで」
嘘。
このイヤホン、少し短いの。
1センチあるかないかの違いだけど、ほら、先輩との距離も少し短くなったでしょ?

 
[距離=イヤホンの流さ]
 
(イヤホンの秘密なんてもう気づいてるっつーの)
(コイツ…どんだけ可愛いことしてくれんだ…)

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