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□君に(もう一度)永遠に恋をする
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あのとき、一番馬鹿だったのは限りなくミーである。
正直、今までは調子にのってたのだ。
ベルセンパイは、ミー以外好きになるなんてないだろう…………と。
 
 
[君に(もう一度)永遠に恋をする]
 
 
HRが終わって、騒々しくなった教室内。
ミーはさっさと帰る準備をしようと鞄に教科書を詰めていた。
「フーラン。王子様がお呼びだぞ」
黙々と作業を続けていると前の席の男子がミーの机をトントンと叩く。
来たか…。
刹那的に彼がいう王子様はわかったが一応扉を見てみる。
教室内の女子がキャーキャー言ってるのを聞きながら、やっぱりその予感は当たっていたことを確認した。
「帰るぞ」
「…何なんですかベルセンパーイ」
ベルセンパイとは1つ年上の先輩。
容姿端麗でテストではいつも首位。そのうえ何をやらせても完璧にこなすと専らの評判である。
そして家柄が良い為か、基本自己中ではあることも含めて王子様、と学園中から憧れの眼差しを向けられている人物だ。
…そして。
「もーっフラン!羨ましすぎるぞこのぉっ!」
「ウチラなんて話したことも無いのにーっ」
周りにいる女子がミーのほうを見てはセンパイを見、そんなことを口にしながらため息を吐く。
「…なにがですかー」
「だってねぇ」
「わかってるくせにねぇ」
「付き合ってるなんてうらやましすぎるじゃん?」
「…付き合ってないし」
そうなのだ。
別にミー達は付き合っているわけではない。
ベルセンパイの視線に含まれている感情に気づかないわけではないし、その感情を受けて嫌なわけがない。
寧ろ嬉しく思うし。
…でも、…なんだか
…認めるのは悔しい、っていうか。
「ちょっとフラン。遅いんだけど」
鞄を持ち上げようとしたところでセンパイがづかづかとミーの机の前まで来る。
その姿はミーが見たって誰が見たって
(格好いい…)
と、思うに仕方ない程だった。
「………今行くところだったのにー」
「あ?王子のこといつまで待たせる気だよ」
「…せっかち堕王子ー」
そうして立ち上がったところで、既に教室から出ようとしているセンパイの側まで駆けて行く。
そうして隣に並んで廊下を歩いていると、ふと手元が軽くなった。
「…あ、センパ…」
「………ンだよ?」
違和感は、鞄。
結構重量感のあるそれは、ミーの手から離れ、ベルセンパイの手にある。
(………反則でしょ……)
無言で、何も言わずに紳士的な仕草をするセンパイに、胸の高鳴りが聞こえてしまいそうで焦る。
本当、ミーこそセンパイが好きでたまらない。
…悔しいから、絶対言ってやらないけど。

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