magi

□キスにほだされる
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じー。痛い程の視線が息苦しい。
いつもならにやけてしまう相手も、今日ばかりは本気で苛立っているようでこちらとしてはからかうこともできない。
…まぁ、原因は正真正銘俺以外何者でもないのだけれど。
「…ジャーファル、…さん?」
「口動かすな手動かせ」
「…はい」
たまりにたまった書類共から逃げて逃げて逃げて。
今日の朝、起きたらジャーファルにしっかり腕を押さえられていた。
(…ヤル気出ない)
王サマって本当面倒くさい。
特に書類添削だとか許可だとか、楽しさが全くないし。
「…なあなあジャーファル。キスしたいって言ったら怒るか?」
「んー。そうですね…多分殴ると思います」
「…殴るのか…」
「はい。なのでアンタ、くだらないこと考えてないでさっさと……っ!????」
ぐちぐちぐだぐた。可愛くないことを吐く可愛いジャーファルの額にくちづけてみた。所謂不意打ち。瞬時にして頬が朱色に染まったのが見てとれる。おーおー、動揺してるようだな。
「なっ………なにするんですかっ!!」
「なにって…キス?」
「そんな白々しく…っ!」
「だってジャーファル。眉間に皺寄ってるから」
つい、ほぐしたくなっちゃって。
ニヤリ、と笑いかけると「あー、もうっ」なんて、観念したのかしないのかよくわからない声が返ってきた。
なになに?おまえもキスしたいの?
「シンのバーカ」
ぼそり。耳元で囁かれた言葉は、罵倒の言葉のはずだがなんだか照れ隠しのようで。
ああもう、可愛くてたまらない!

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