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□貴方以外の幸せの居場所
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初めて出逢ったのは中学生の頃。
初めて彼に告白されたのは中学3年生のときだった。
 
[貴方以外の幸せの居場所]
 
「…ねぇ、フラン。好き、大好き」
「…だからー、ベルー…」
ミー、もう来月に結婚するんですってばー。
相席しているディナーでそう宣言すれば、ベルはがっくりとうなだれた。
「…どーして?…オレ、ソイツよりぜってーフランのこと愛してる自信あるのに…っ!」
「…仕方ないんですよー。…婚約者、なんですからー」
ミーは、大手会社の社長の娘兼後継ぎであり、生まれたときから結婚相手が決まっていた。
だから、ミーに拒否権は無い。
今更断ったとしたら両家共に迷惑だ。
…ミーが、我慢すればいいだけの話。
思いを、伝えなければいいだけだ。
「…もー、ミーはその人と生きて行くんですってー…」
「……………………そ、か…」
はっきりと言えば、今まで12年間自分を好きだと言い続けてくれた彼は涙を流した。
「………っ!!?」
「……………、………!」
綺麗な純粋の、透明な水。
彼の頬に伝う涙を手の甲で柔らかく拭いてあげれば逆に彼の手が自分の頬をかすめた。
「……………なんで、フランが泣いてんの」
「…………、へ…っ?」
指摘されて思わず手を伸ばせば、冷たいソレに指先がふれる。
……………………………………涙。
自分は、気持ちを隠して泣いていた。
「…泣く、なんて…っ、期待しちゃうっつーのっ…!」
「………………ふぇっ………今までありがとう…!ベルっ…!!」
「………っ」
(そんじゃ、お前がちゃんと幸せになるかどうか10年待ってからオレ、結婚するから)あの約束をしてから、もう10年が経った。
 
「…ねぇ、フラン。…も、オレらも10年年取ったな」
「…………そう、ですね…」
「…ね、フラン。ー幸せ?」
「………っ!?」
王子、結婚するから。
小さく紡がれた言葉に息が止まりそうな思いになる。
「………おめでとう…」
震える唇でなんとか紡げば、その声は気のせいか涙声だった。
 
(本当は、ミーにとっての幸せは貴方でしか無かったけれど)

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