krbs short

□王子様にはなれないけれど、
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口に含んだダージリンは味がしなかった。
黄瀬の表情を見ればその思いは嫌でもわかってしまう。さつきは真っ直ぐに黄瀬を見ることが出来なかった。
喜んで、しまったのだ。
大好きな親友が自分の大好きな人と付き合い始めたと報告を受けてからさつきはずっと二人の理解者になってきた。最近黄瀬と疎遠で寂しい、とテツナがこぼした時も、やんわりと黄瀬に忠告するくらいには協力をしてたし応援もしてた。相も変わらず黄瀬を好きなままだったけれど、同じくらい大好きなテツナが幸せそうだったからつらかったけど我慢してきた。さつきも始めの頃は別の人を好きになろうと告白してくる男と見境無く付き合ったりしていたけれど、黄瀬以外を好きになれそうにないとわかってからは影で恋をしながらも主人公の良い親友を演じてきたつもりだ。見返りのない恋はつらくて悲しい。でもいつからか、さつきは思った。好きでいるだけだから好きでいさせて。邪魔はしないからこの恋が消滅するまでは。
だから、黄瀬の口から淡々と語られたテツナとの関係についての話は、さつきに希望の光をさしたと言っても過言ではない。今泣いているかもしれない、と脳裏に可愛らしい親友の姿を思いつつも、さつきは一瞬思ってしまった。…チャンスがきた、と。それはあまりにも無粋で最低な感情だったと、さつきは自分を恥じた。気づいてしまったのだ。チラリと見た黄瀬の表情から。
何年も恋し続けてきたからこそわかってしまった。
「…ああ、きーちゃんは今も…」
隣にいる大ちゃんが心配そうな目を向けていた。…どうして大ちゃんがそんな顔してるの。可笑しいな。…馬鹿だなあ。
本当、大ちゃんは優しくてかなわないよ。
 
「………テッちゃんが大好きなんだね。」
 
スパンコールがきらきらと輝いた。
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