magi

□お似合いの台詞
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カタリ、控えめな音が部屋に響く。
ヤムライハの魔法書(らしきもの)が一冊落ちた音だった。
「おい、ヤムライハ」
仕方なく拾って机の上に置いてやるが、俺がここへ来たのは本を拾う為なんかじゃもちろんない。
「おい」
俺の用はコイツを思い切り抱きしめることだったのだがそれがなかなか起きてくれない。
けっ、つれないな。
心の中でボソリ、愚痴をこぼしてヤムライハの寝ているベッドの上に腰かける。
まあ、起きないよな。だって今は深夜。
いつも魔法の研究とかいって起きているからもしかしたら、なんて期待したりしたけどまあ当然の結果だよな。
俺の心情なんてなんも知らねーコイツは、すっげー気持ちよさそうに寝てやがる。
(…美人だよな…コイツって…)
普段は魔法バカでいやなやつでいちいち俺に対抗してきては掴み合いの喧嘩になるよーな、色気皆無な奴だけど。
「…俺も物好きだよな」
それでも、彼女は俺の一番大切な女であり、それは昔も今も変わらない。
幼い頃からずっと一緒にいた彼女は、俺の気持ちを掴んだままだ。
……さっき、夢を見た。
ヤムライハが俺の手を振り払ってどこかへ行ってしまう夢。
がらにもなく怖くなってしまいこうして本人の部屋まで赴いてしまった。
サラリ、流れる髪を手櫛でとかしてやる。
指通りのよい細い髪の毛は俺を少しだけ和ませた。
「…ん、なによ…?……シャルルカンじゃないの…」
「ん、オハヨ。ワリィ、まだ寝てていい」
「ん…」
もともと意識は浅かったのかすぐに夢の世界へ戻っていった彼女を優しく撫でる。
「…あ?」
くい、
控えめに引っ張られたのは俺の服の裾だった。
その手に愛おしさが込み上げきて、胸が苦しくなっちまって、ようやく寝れたのは翌日6:00のはなし。

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