short

□シュガーアンドロイドプリンセス
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喉から手が出るというのはよく言ったものだが、テツナはまさに心からそう思った。
喉から手が出るほどに欲しいものがある。
正確に言えばひと、なのだが。
 
[シュガーアンドロイドプリンセス]
 
「どうしたの?」
心配そうに美しすぎる顔を傾げたひとに、すみません、と笑う。彼を取り巻く色はいつも暖かい。
触れるとほわりと熱が伝わってきそうだ。実際にテツナは触れたことはないから真相はわからない。太陽みたいなひと。
黄瀬くん。心の中で呼びかけると前を歩く背中が、くるりと振り返った。にこり。「並んで歩いてもいいっスか?」太陽みたいに、いつも僕を照らしてくれるのだ。
彼は、優しい。彼の優しさに触れる度、テツナは思う。黄瀬くんは、黄瀬くんの言葉は、まるで太陽のようだと。彼の髪色や瞳からも連想させられるが、彼の色は例えるなら黄色だ。優しい色。…僕の、好きな色。
「どうしたってでに入らないものがあるんです。欲しくて欲しくて、仕方がないのに」
隣を歩きながら僕は言う。本当のことだ。
きみは、みんなに優しいから。きみは、みんなに愛されているから。
僕だけのものになればいいのに。叶わないことだとはわかっているけど、一緒に笑ってそばに居られたら、と淡い夢を描いてしまうのだ。黄瀬くんに会うまでは理解出来なかった思考である。僕の世界を、彼は脆く崩れさせた。
さっきの言葉に嘘はない。語弊があるとしたら、それは、ものではないというところだけだろう。
「…俺も、欲しいものがあるっス。空みたいに、俺を包み込んでくれるもの。ずっと欲しくて仕方ない」
にこり。誰もが羨む美貌が、太陽みたいに、まどろんだ。
 
 

(あなたが欲しい。)
 
甘くて空みたいに澄んだ目を、一生自分に向けていて欲しい。 
 
 

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