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□年の終わりと始まりに
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大晦日はテレビを見て年を越える。というのが、僕の中でのイメージである。
[12/31 23:55]
デジタル時計のその表示をなんとなく見た。現在地は黄瀬くんの膝の間。因みに彼の部屋。一緒に初詣行くならむしろ泊まって行かないっスか、という誘いにのり、一人暮らしの黄瀬くんの部屋に一泊二日。
さっき彼がいれてくれたココアを飲みながらぼぉーっとしてる。黄瀬くんも珍しく静かだ。もしかしたら眠いのかもしれない。今日も午前中は仕事だったし。
高校を卒業し、僕は4年制大学に進学したけど黄瀬くんは本格的にモデルの道へ進んだ。最近は俳優デビューもし、バラエティーにも進出するようになった。今ムービーウィークリーランキングで首位に輝いている学園恋愛ものの映画の主役は黄瀬くんだ(ちなみに僕は試写会に行った)。
[12/31 23:57]
そうこうしているうちに今年が終わろうとしている。「ねえねえ、黒子っち」耳元で呼ばれて振り向く。ちゅ。リップ音に顔が熱を持つ。
何するんですか。いちゃいちゃしたかったの。ん、黒子っちココア味。…黄瀬くんは苦いです…。あはは、ごめん。コーヒーブラックだから。そんな会話に心があったまる。
今年が終わる。今年がやってくる。
たまにはこうして、恋しい人とふたりで迎える新年も良いと思わなくもない。なんて。
本当は来年もこうして年を越したいな、と思っていることは絶対秘密にしておきます。だってこの人、調子のると悪いから。
[1/1 00:00]
「……あ、」
「年、越したっスね」
ふたりして時計を見やる。知らないうちに僕は黄瀬くんの膝の上に乗っかって向かい合っていた。丁度良い。ニコリとして口を開く。
「あけましておめでとうございます」
「今年もよろしくね」
「今年も愛してる」
お返しとばかりに唇を軽くくっつけると、きょとんとした顔が瞬時に赤くなった。
あーあ、イケメンが情けない。でも、僕はそんな黄瀬くんが大好きですよ、と。声には出さないけれど今度は黄瀬くんからしてきたちょっと激しいキスの中で、そんなことを考えていた。
「今年も愛してる」
彼の甘くて色っぽい声で美しい微笑みと共に言われて心が苦しいくらいに幸せで埋め尽くされた。
 

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