short

□全部が愛しい
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例えば、満員電車でひとつ席が空いたとき、自分より先に私を座らせてくれたりとか。
例えば、荷物をさりげなく持ってくれたりとか。
例えば、あの人懐っこい笑顔だとか。
例えば、不意に魅せる大人びた表情だとか。
きーちゃんのどこが好きなの?と問われたらいっぱい出てくる。
きーちゃんは、優しくて、甘ったるくて、美しい。
何もかもが真っ直ぐで、素直で、それ故に時々わたしの頬を染めたりするけれど。
だけどたまに、ほんとうに時々怖くなる。
例えば、わたしが知らない人に所謂ナンパ…されたときとか。
きーちゃんのファンの子に叩かれたときとか。
思わず息を飲むほどの、私にはしたことがない怖い顔を相手に向けるのだ。
時々、彼はほろ苦い。
「甘くて苦いなんて、チョコレートみたいだね」
練習の5分休憩のとき。
私の隣に並んだきーちゃんに放ってみた。
どうやらきーちゃん、突然の言葉に戸惑っているよう。
「チョコ…っスか?」
「うん。きーちゃんっぽいな、って」
「おれっスか!?」
うん。そうだよ。
甘ったるくて一気には食べれないけど、中毒になっちゃうあれ。
つまり、私はチョコレートもきーちゃんも好きってこと。 
 
全部が愛しい

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