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□心の音が聴こえた
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全国屈指の強豪、洛山高校のハードな部活時間もようやく終了した。
一年生ながらも既にスタメン、キャプテンである赤司征十郎は誰もいなくなった部室でしばらくぼーっとしていた。
彼らしくないことは何より赤司自身が理解していたし、何もその休む間もないほど襲いかかってくる練習メニューが辛いというわけでもない。
ただ、考えていた。
彼は、考えている。
どうやったら最愛の想い人に気持ちを伝えられるか、と。
 
 
心の音が聴こえた
 
 
僕はただただ思い出していた。
前チームメイトでマネージャーをしていてくれた彼女との日々を。
初めて告白したのは確かまだ黄瀬もいなかった頃だ。
「好きだ」
「僕もみんなが好きです」
「……は?」
「はい?」
そうして見事に交わされた僕は(すごく傷ついた)今度は意味をわかってもらおうと明確に言った。
「俺はお前が好きだ」
「僕も赤司くんのこと好きです。がんばってくださいね、キャプテン」
「いや、あの…」
「応援してます(キリッ」
いやいやキリッじゃねえよ。
可愛いけど。
とりあえずお前鈍感すぎだろ。
そうして同じようなこと数十回(真面目に)。
雰囲気を変えてみたりデートに誘ってみたりいろいろしてはみたもののいまだに聞き入れてもらえてないのだ。…この僕が。
そうすると限りなく失恋ではないか、とあきらめそうになるがあながちそうでもない。
彼女は、…テツナは僕のことが好きなはずだ。
それは間違いではない。
耳元で囁くと顔を真っ赤にしたり、抱きしめると抵抗せず抱きしめ返してきたり。
「なあ、普通嫌いな奴にはしないだろ?」
『はい?どうしたんですか赤司くん』
深呼吸を三回してから(皆僕のことを魔王と呼ぶが意外と僕は小さい奴だったりする。あ?一応言っておくが身長じゃない)ストレートに聞く。
や、本当は聞くつもりじゃなかったけど、電話かけながら過去を思い出してたら聞きたくなっただけ。
「テツナ、いいかい?これから真面目な話しをする」
『はい、どうぞ』
耳元では何のためらいも含まれない純粋な可愛いテツナの声。
すー、はー。
どうしようもない緊張感が僕を包む。
携帯電話を握りしめて息を吸った。
「テツナは僕のことを恋愛対象として見ているか僕にキスされたり抱かれたりましてや結婚を前提に付き合ったりすることを想像したことがあるかああ一応言っておくが僕はお前のことを恋愛対象として見ているぞテツナとキスしたりテツナを抱いたりましてや結婚を前提に付き合ったりすることも想像しているしそもそもテツナのことが大好きで何回も告白しているのにもかかわらずお前が気づいてくれないから毎回空回りしていたけど今日こそは僕の気持に向き合ってほしいんだ」
『赤司くん?息大丈夫ですか?』
「ノンブレスでお前への愛を伝えてみたんだがどうだろう?」
『凄いですね』
「いや、あのな?」
凄 い で す ね っ て な ん で 他 人 事 ?
まさかまた伝わってなかったのか?
愕然としつつとりあえず確認しようと口を開いたところなんか向こうで声がした。
『赤司くん僕もきみのことを恋愛対象として見ていますしきみとキスしたり抱かれたり結婚を前提にどころか結婚しているところを恥ずかしながら想像することもありますよ?』
「  」
え、今彼女なんて言った?
――恋愛対象として見ていますしきみとキスしたり抱かれたり…――
あれ。これって通じたどころか…
最 大 の デ レ 到 来 ?
「あ、え、テツナ?――それは、僕の恋人になってもいいってことか?」
『何言ってるんですか赤司くん。僕たちはとっくに付き合って…あれ?…――まさかとは思いますけど…付き合ってなかったんですか?』
「は?え、な??僕は今まで告白に気づいてもらえてないのだと思っていたが…?」
『どおりで時々赤司くんが変なこと言ってるなあ、って思ってました』
動揺したように言うテツナの声は明らかに嘘は交じっていない。
「え、テツナ。それっていつから?」
『たしか…黄瀬くんが入部する前だったような…』
どうやら僕の告白は一度めで既に受け入れられていたらしい。

 
 
 



*赤黒♀はどうしても鈍感テっちゃんになる

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