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□プロイ先生の恋愛講座
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三題噺:『プロイ先生』『じゃがいも』『講座』











極東に浮かぶ島国の日本国。
大陸に比べれば小さいものの、実は他の国々に比べれば面積は大きい方です。
そんな私、日本は極東からはるばる西へ向かいあるお方に会いにやってきました。

すでに国から引退し、ドイツさんの家に転がり込んで毎日ブログを更新したり日記を書いたりと、とてもお暇な方なのですが。実は私の師匠でもあります。

そんな師匠、プロイセン君を訪ねるのは訳があるのです。
わざわざ訳もなく訪ねるわけありませんからね、プロイセン君なんかに。


おっと本音が…


ご本人が目の前にいるのになんてことを…

「おい日本!始めんぞ。ったくボケーっとしてんじゃねぇよ。折角俺様がてめぇのために用意してやったってのによぉ。」

偉そうに白板に木製の指し棒をカッカッカッと叩くのは例のプロイセン君です。
まるで授業に集中しろと教師が生徒に行うような行為だ。

確かに私は今プロイセン君の講座だかなんだかを受けるところだ。
しっかり机にまで座り、手元にはペンと机にはノートまで広げられている。
まるで授業だ。
彼曰く講座らしいが…。


「あの、プロイセン君。」

私は発言の許可を得るために手を上げた。

「なんだ、日本?発言を許可してやる。」


ケセセと笑うプロイセン君はそれは楽しそうで、こーゆーごっこ遊びが好きなのでしょうか。

プロイセン君がどんな趣味でもいいですけど、今日は私が自らココに来たのだからプロイセン君に口答えするつもりはありません。

「はい。私のお慕いしている方はご存知ですよね?」

「もちろんだぜ。まったく気に食わねぇ奴だけどな。」

腕を組んで頷くプロイセン君が理解してくれていたので私は安心しました。
そろそろ本題に入りましょう。

私には長年お慕いしている方がいます。
名前はイギリスさん。
私とは似つかぬ見た目と魅力の持ち主です。
しかし私たちはとても離れていて滅多に会えません。
それでもここ数ヶ月は私のところに会いに来てくださいました。
そして彼から衝撃的なことを聞かされたのです。

それは…


「イギリスの野郎に恋人、…」

「はい…」

そうです、そうなんです。
イギリスさんに恋人ができたらしいのです。
直接聞いたわけではありませんが、イギリスさんが惚気を私に漏らしたのです。
俺の恋人は可愛いんだ、優しくてとにかくスゴイんだ、と…。

「スゴイ、って何がすげぇんだ?体か?」

「知りませんよ、私に聞かないでください。」

話を戻しましょう。

私はそれを聞いて鈍器で殴られたように衝撃を受けました。
なんとかその場ではニコニコしていることができましたが、胸がズキズキと痛んで叫びたかったのを必死で堪えました。

可愛い、可愛いと何度も私に惚気を言うものですから最近は会うのを拒否してしまいます。
断るときはやんわり断ってますよ?
しかし電話越しに涙ぐむイギリスさんが可哀想です。


どうしていいのか分からず、恋愛なんかまともにしたことが私は誰かに助けを求めることにしました。
まずはフランスさんを訪ねようとしたのですが、なんか危険な雰囲気がしたので辞めました。
この前イタリア君もセクハラされたみたいですし…。
ちなみにそのイタリア君にも相談しようとしようとしましたが、まぁナンパの方法しか教えてくれなさそうでしたので…

なくなく元師匠のプロイセン君に電話をし、家に来いと言われ何かと思えば恋愛講座を受けることになったわけです。
プロイセン君が恋愛講座とか笑っちゃいますね。



さて、ではそろそろ…

「始めてくださいプロイセン君。」


「おう!まずはモテない男の3つのタイプからだ。モテる男は積極的で相手のことを考え行動できる奴な。お前の場合は積極性に欠ける。」

ほ〜…なるほどなるほど。
確かに私はあまり積極的ではありませんね。
とゆーかプロイセン君はモテるのでしょうか?

まあ今はそんなこと考えてる場合じゃありませんね。

メモメモ…と。


「そんでだな。タイプ1、こいつは勘違い野郎だ。相手が自分に気があると思い込んで告白してみたら違かった、ていうのが多い奴。ま、日本はこんなタイプじゃねぇな。」

「そうですか…」

「次にタイプ2。いい人どまりの野郎だ。こいつは相手から友達としか見れないんです、って言われる奴な。ハッキリ言って日本はこのタイプに当てはまってる可能性はあるぜ。」


いつもは見れないプロイセン君の真剣な表情がおかしくて笑ってしまったら、コラ!と一喝された。

私はノートにペンを走らせながらプロイセン君の言葉にしっかりと耳を傾けました。


「次、タイプ3。こいつは……休火山野郎。まさしく日本人に多いタイプってやつだな。自分には欠点があるから諦めちまうんだ。……日本はタイプ2とタイプ3だな。はあ…俺様、先が思いやられるぜ。」

やれやれと手を上げたプロイセン君が心なしか嬉しそうで私はムカっとしました。

しかし今回ばかりはあの人は先生で、言ってることも間違ってはいません。


あの得意げの表情はいただけませんが…。


「何か質問ねぇのかー?」

「大丈夫です、だいたい分かりましたから。」

「よし!じゃあ次行くぜ。教えることはいっぱいあるけどな、まあいろいろすっ飛ばして片思いを成功させる方法を伝授するぜ!」


ビシッとカッコ良く言い放ったプロイセン君を私は一瞬ポカンと口を開けてみました。

それから、ぇええええええ??と思わず聞き返してしまいました。

ふふん、と鼻を鳴らしたプロイセン君。


「あの、ですね…プロイセン君、私はイギリスさんとお付き合いしたいとかそんな図々しいことは…」

私はただ気まずくなってしまった今の現状を改善したいだけで…

お付き合いだなんて…


「これだから休火山野郎は…。」

「…………。」


悪かったですねネガティブ野郎で…


「これは恋愛講座だぜ?俺様、約束は破らねぇ、成功するまでが恋愛講座だ!」

「それはそれは…」


私のためにやってくれてることなのでしょうか?
まさか暇つぶしとかでは…ありませんよね?


「とにかくだ、まずは俺様の話を聞いとけ。」

「はい。」

ここはプロイセン君に従うしかありませんね。


じゃあ続ける、とまた真剣な表情に戻ったプロイセン君。
キリッとしてればカッコい人なのに…残念な方ですね。

私もペンを握りしめてメモの準備をします。


いつしかイギリスさんに英語を教わった時のこと思い出します。

ああ!そんなことを思い出してる場合ではないのです!
今はプロイセン君の講座に集中しなければ!


「おい日本、ちょっと休憩居れるか?なんかボーッとしてねぇ?始まったばっかだけどよ…」

眉をひそめてプロイセン君が私に気を使ってくれました。
あのプロイセンが私に気を使ってくれるなんて…。

「大変申し訳ありません。大丈夫ですので続けてくださいますか?」

「………おお。じゃあまずは、」


私に背を向けてなにかを白板に書き始めたプロイセン君。


白板に書かれた文字を見ればそこには『好きになった奴に恋人がいる場合』と書かれていた。

そしてその下に、諦めるor諦めない、と殴り書きしてある。


「さあどっちか答えてみろ!」

「え、」

どちらと言われても…ここは諦めないを選ぶところ?

いやいや、そんな重たい奴にはなりたくありません!


「そう、答えはどちらでもねぇ!!」


………。

まだ何も言ってませんよ。

とゆーかどちらでもないんですか、そうですか。
その得意げな顔を捻り潰したいです。


「大事なのは恋人がいるかいないかじゃねぇ。今現在そいつらの状態が問題だ。」

それからまた白板に素早く何かをガリガリと書き、ペンを置くと指し棒で白板をカッカッと叩いた。


「現状には大きく分けて3つある。互いに冷めてる状態、安定して連絡も取り合い程よく思い合ってる状態、そして四六時中互いのことしか考えていない盲目状態だ。ちなみにイギリスは盲目状態だな。」

「そうですね。ずっと可愛いって連呼してましたから。」

自分で言ってて悲しくなります。


「そうだ、そしてそんな状態の奴らは互いのことしか頭にねぇ。つまりだ、第三者がいくら言いよってもイギリスにはじゃがいも程度にしか見えねぇだろうな。」

そうですか、私はじゃがいもというわけですか。
よくわかりました。

「そしてじゃがいもは決して人間には勝てない。」

どうやら私は人間には敵わないようです。
しかし、一応国である私がじゃがいもとはいかなるものだろうか…。


「落ち込むなよじゃがいも…俺様じゃがいもは好きだぜ。」

「それは貴方がドイツ人だからですよ。」

しかもこの人私のことじゃがいもって言ってますね。


じゃがいもの繁殖力をナメてはいけませんよ、彼ら一人で繁殖可能な野菜ですから。


「ああ、じゃがいもは最高だぜ。」

「……話がズレてますよ。」

「悪ぃ悪ぃ、話をもどすぜ。」


話を戻してプロイセン君はまた白板を叩いた。

「つまり、お前がどれだけ待てるかってのも片思いの成功の秘訣だ。時間が経ってそいつらが別れるのを待つ、そんでそこを狙ってアタック、ってわけだ。流石俺様!天才!」

プロイセン君の自画自賛は放って置いて、時間が経つのを待つとは…

私、イギリスさんに恋してからかなりの時間が経過しているのですが。
とのくらい待てばよろしいのでしょうか?

もしかしてイギリスさんが恋人と別れるまで私はイギリスさんと会うことを拒否し続けるのでしょうか?


「ようはお前次第ってこと。」

「はあ、そうですか。」

こんなじゃがいもに果たしてそんなことが可能なのかは分かりませんが…


「イギリスが好きなんだろ?」

私はブンブンと頭を上下に振りました。

「なら頑張るしかないと思うぜ、ケセセ。」

イタズラっぽく笑ったプロイセン君に私は口を緩めてしまいます。


「お!やっと笑ったな日本!あー!俺様のおかげってやつ?」

調子に乗らないで下さい。


「恋愛講座はもう終わりですか?終わったなら私は帰りますよ。」


「おお!俺様がてめぇに教えられることはこれくらいだな!でもって後はてめぇ次第だ。」

「貴方…本当にこーゆーことだけは言葉が上手ですね。」

プロイセン君の言葉には何か信用できるものがあります。
真っ直ぐだからでしょうか?


「タイミングを逃すなよ…」


最後に私はプロイセン君の言葉に頷いて恋愛講座の教室を後にしました。

それから自国に帰ってよくよく考えてこれからのことは時に任せることに決めました。










「あ。言い忘れてたな…じゃがいもは人を幸せに出来る、ってこと日本に言ってねぇー」

「何を言ってるんだ兄さん?」

ソファに寝転がりながら、んー、と適当に弟の質問を促してニヨニヨと笑った。

「不気味だ。」

弟のそんな言葉にも耳を傾けることなく次はいつ講座を開こうかと脳内で計画を立てるプロイセンだった。





END.
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