APH

□枯れない花
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苦しくて苦しくて

息が出来ないほど胸がしめつけられる


しばらくそんな状態が続くと意識が遠のいていく


このまま眠ったらもう目覚めないんじゃないか


いつもそんなことを思うけど、


目が覚めたら真っ先にあなたの心配そうに私を見つめる顔がある



















「おい菊、調子はどうだ?」


畳に敷かれた布団に寝ている菊に話しかける


閉じていた目をうっすらと開けてこちらを見て微笑む


「大丈夫です。心配しすぎですよ、アーサーさん。」



大丈夫、と言った菊の顔は元気がない


そんな嘘、見ればわかっているけど毎回同じことを聞いてしまう



「ヤッパリお前、入院した方が…」

日に日に弱ってく表情と痩せていく体


「アーサーさん。」


「ん?」


菊は手招きをして突っ立っていた俺を呼んだ


菊の目の前でしゃがんで漆黒の瞳を見つめる


その瞳が俺を見返して数秒見つめあったかと思えば菊に体を引き寄せられた


つまり…


抱きしめられたんだ



「き、菊?!おまっ、なにしてっ」


「私、まだ温かいでしょう?生きています。」



ぎゅうぅっと俺の背中に回っていた腕に力が入る


「そんなことは分かって…」

「私はアーサーさんが思うほど弱ってはいませんよ。ただ…あなたに心配かけるのは嫌ですから」


スッと菊の温もりが消えたかと思うと菊は俺から離れて俺の頭に手を乗せる


ポンポンと子供を可愛がるように頭を軽く叩く



「っ、子供扱いすんなばかぁ!」

笑う菊の手を握り指を絡めた



「本気で心配してんだよ。」


無理して笑って見せる菊に腹が立つ


でも今の笑顔は本物だ



菊は不思議だ


医者に行こうともせずに家で寝ているだけ



酷い風邪だから心配しないで下さい

なんて嘘は簡単に見破られた



俺が菊の部屋に行くと時々、胸を抑えて苦しそうに息をしていたことがある


急いで近づいて菊の背中をさするが過呼吸にも似た症状は収まらず、最後は虚ろな目を閉じて意識を失ってしまう


さっきだってそうだ。

菊が目を覚ましたのはほんの数分前



その病気は日本人だからなる病気なのかもしれない


いや、多分単に俺が病気に対して無知なだけであろう



そう思いたかった


病気はその時だけ悪くなって、あっとゆう間に治るものだと思わなければやっていけないのだから



「なぁ、菊。俺、ヤッパリ今日からお前んちで暮らすよ。一人じゃいろいろと大変そうだし」


もし、



自分が居ない間に菊が旅立ってしまったら…


そんなことは考えたくもないが



「そんな身体じゃ飯も作れねーし…」


「えっ?!代わりにアーサーさんが作るんですかっ?」


露骨に嫌な顔するなよ

軽くショックなんだからな



「俺じゃ…不満か?」


「いえ!アーサーさんが家に居てくれるのはとても嬉しいんですが…料理は私が」


「ダメだ。病人に無理はさせられない!」


えー…と困った表情で戸惑う菊


そんな表情すら消えて無くなってしまうのではと不安でいっぱいだ





ドンドンドンドンっ



「ん?なんだ?玄関のほうから…」


突然玄関の戸を叩く音がなる


「こんな時間に誰でしょうか?」


俺は立ち上がって菊に動くなと釘を刺して玄関に向かった



人影が一つ、戸を無遠慮に叩き続ける



「誰だよこんな朝っぱらから…」


ガラガラと戸を開けるとそこにはニコニコ笑った、


「菊ー、見舞えに来たあるよー。土産にパンダを持ッ……なんでお前がココにいるあるか、アーサー」




お決まりのチャイナ服を着た王耀だ

しかもでかいパンダのぬいぐるみまで抱えてやがる


「今日から菊の看病することになったからな。見舞いが済んだらさっさと帰れよ」


皮肉をたっぷり込めた言い方で言ってやれば耀は俺を無視してズカズカと家に入って来やがった


「おい!耀、てめぇ!人の話を聞け!」




「菊ー!我の可愛い菊はどこあるかー?」


完全に無視しやがって!


まあ、俺と耀は仲良くはないし…


「おい、お前。菊をどこに隠したあるか!」

「隠してねーよ。そっちの部屋で寝てる」


菊の家は同じ襖や障子が何個もあって和室がほとんどで複雑な仕組みになっている


昔ながらの家なので俺も結構気に入ってたりするんだけど…広すぎる



「ココあるか!菊ー!」


締まっていた障子を豪快に開けて菊の寝る部屋に入ってく


あいつ遠慮って言葉知らねーのな



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